糖尿病を改善する運動療法と行動変容

糖尿病と運動療法
1日の総エネルギー消費量は、基礎代謝量と食事誘発性熱産生と身体活動量(運動と生活活動)で示されます。

 

生活活動には、ごく短い軽い身体活動や、わずかな動作も含まれる。姿勢を正している状態、横になっている状態よりも座った状態、それよりも立っている状態の方が、意味のある活動といえます。運動の種類、強さ、時間、頻度、時間帯を具体的に決めることが大切です。

 

行動変容:運動に対する思いとその対応
 
前熟考期:運動の必要性が認識されていないか、運動を回避している状況
対象者から思いや考えを聴き、運動の効果を伝えることが大切です。

 

熟考期:運動の必要性に気づいているが、まだ迷っている状況
車を使わずに階段を利用するなど、生活活動を増やすことを勧めましょう。歩数を1000歩増やすなど、無理のない簡単な目標から少しずつ始めることが大切です。細切れの運動でもいいので、この程度ならできるという実感を掴んでもらうことです。

 

準備期:運動療法の利益を認めて運動を始めようとしているか、自分なりの運動をしはじめた状況
血圧変化、低血糖、合併症の悪化を避けるような運動が必要です。わずかでも行動変容が見られた場合には、称賛することが大切です。

 

実行期:有益性と負担感を超えて運動を実行しているが、完全には定着していない状況
まず、実践していることを称賛しましょう。階段を楽にのぼれるようになったなど、運動の効果を意識させることが大切です。体重、体脂肪量、腹囲、血糖コントロールが良くなっていることにも、意識してもらいましょう。運動で得られるポジディブな面を常に意識していくことが大切です。

 

維持期:定期的に運動しており、半年以上と習慣化している状況
現在の習慣を継続するように促すことが必要です。

 

運動理論と運動効果
運動理論を理解することは、運動の実施につながります。
運動はインスリンの働きを増強するだけでなく、インスリンとは無関係に血糖値を下げる作用があります。筋肉を動かすと、筋肉細胞内のエネルギーの消費に伴い、AMPKという酵素が活性化します。そして、糖輸送担体(GLUT4)というタンパク質が筋肉細胞表面に移動し、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込みます。この結果、運動をする(筋肉を動かす)と血糖値が低下します。

 

運動を継続すると、筋肉内で糖輸送担体が増加します。そして、インスリンとは無関係の血糖の利用(糖輸送)が強化され、インスリンが作用しやすい状態になります。さらに、脂肪燃焼効果により肥満も改善します。

 

内臓脂肪減少は、脂肪細胞から分泌される生理活性タンパク質(アディポカイン)の分泌異常を是正します。そして、脂質代謝改善、血圧改善、インスリン抵抗性改善、抗動脈硬化作用につながります。筋肉や肝臓に蓄積していた脂肪が減少すれば、それらの臓器の機能が回復します。

 

さらに運動は、心肺機能を高め、肉体的体力を改善し、筋萎縮や骨粗しょう症を防止します。意志や意欲を高め、ストレスを解消させ、ポジティブな自己イメージの形成にも寄与します。体温調節力、免疫力、環境への適応力も養われます。最近ではがんや認知症の予防、長寿につながるとの研究報告もあります。

 

このように、運動は全ての生活習慣予防や治療、QOL改善、介護予防につながります。

 

運動の時間と量
血糖改善、脂質代謝改善、血圧改善、動脈硬化防止するためには、時間帯は関係なく週3~4回定期的に運動を行えば良いとされます。また、肥満改善のためには中程度強度の有酸素運動を主体に、運動量(強度×時間)を増やすことが必要です。

 

一般に、食後早期に運動行うと食後高血糖の改善に期待ができます。筋萎縮や寝たきり防止には、柔軟性と不足しがちな筋力強化に重点をおきましょう。

 

運動療法が禁止される場合

  • 顕著な高血糖(空腹時血糖値が250mg/dL以上)である場合
  • 増殖性網膜症による新鮮な眼底出血がある場合
  • 腎不全、虚血性心疾患、急性感染症、骨・関節疾患、糖尿病壊疽がある場合

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