風邪薬の詳細

【風邪薬】
以下の7種類は、良く使われる「かぜ薬」です。その中でも、「抗菌薬」、「解熱鎮痛薬」、「鎮咳薬」、「うがい薬」についての詳細と知って得する特徴をお示しします。一般的な風邪は、薬では治りません。

  • 抗菌(こうきん)薬(菌をやっつける薬)
  • 解熱鎮痛(げねつちんつう)薬(熱や痛みの薬)
  • 鎮咳(ちんがい)薬(咳止めの薬)
  • 去痰(きょたん)薬(痰きりの薬)
  • うがい薬
  • 消炎薬
  • 漢方薬

抗菌薬とは?

細菌を「増殖させない」「死滅させる」効果をもつ薬です。風邪に対しては、症状悪化を防ぐ目的で投与されることがあります。実際に、私の知り合いの医師は風邪の患者さんには必ずと言っていいほど、抗菌薬を処方します。しかし、先述の通り、抗菌剤はウイルスには効かないため、ほとんどの風邪に対して効果がありません。つまり、風邪に対する抗菌剤は一般的に不要である場合が多いです。

 

ではなぜ、抗菌薬を処方するのか知り合いの医師に尋ねてみました。
・菌による風邪も、多くはないが存在する。
・薬を処方しないと、文句を言ったり怒る患者さんがいる。
・肺炎などの重篤な症状を予防できる。※
  ※「抗菌薬で肺炎を予防できるのは12,255人に1人」というデータもあります。

 

これらの見解に対して、何が正解なのかは、正直わかりません。

 

先述の通り、軽度の風邪に対して、一般的には抗菌薬は不要とされています。しかし、免疫力の落ちた方や乳幼児や高齢者など、本当に抗菌剤が必要な方も大勢いらっしゃいます。また、抗菌薬は風邪だけでなく「化膿や様々な感染症」に対して使用するケースがあります。以下、簡単に注意点等の特徴をお示しします。

抗菌薬の使用の際の注意点

抗菌薬は血中濃度に依存して効果を示すため、飲み忘れないことが大切です。多くの種類の抗菌薬がありますが、その種類によって、「時間依存性」と「濃度依存性」に分類されます。
「時間依存性」:薬が体の中に残っている時間が長いほどよく効くタイプ
「濃度依存性」:薬が体の中に作用する量が多いほどよく効くタイプ
これらのタイプがあることを理解することは、抗菌薬耐性(耐性菌)の出現を防止することに役立ちます。

抗菌薬を使用する際の、最も注意すべき2つの項目

耐性菌の出現
②一度、副作用が出た薬を再度と使わない

 

①耐性菌の出現を防止する
耐性菌とは、多剤耐性菌とも呼ばれ、抗菌薬の効きにくい菌を指します。抗菌薬を、適切に使用できないと耐性菌が出現してしまいます。出現しても、皮膚の表面等にいるだけの状態では、普段の生活上の問題はありません。しかし、免疫力が下がったり、手術などの医療行為によって耐性菌が体の中に入ってしまうと、治療法が少ないため非常に危険です。つまり、将来のために、耐性菌を出現させないように、今から気をつける必要があります。

 

つい先日、耐性菌の出現でほとんどの抗菌薬が使えなくなった、94歳の女性にお薬をお渡ししました。この方へは、使える抗菌薬が1種類しかなかったため、飲み忘れを絶対にさせないようにお薬カレンダーを使い対策しました。(医師からも飲み忘れをさせないように工夫して欲しいと、電話を頂いていました。)

 

繰り返しになりますが、耐性菌の出現は、命の危険にほかならないのです。

 

日本の薬局やドラッグストアで、抗菌薬を購入できないのは抗菌薬の安易な使用を防ぎ、耐性菌を出現させないためでもあります。

 

②一度、副作用が出た薬を再度と使わない
副作用と言っても、下痢などは大した問題にはなりません。重篤な副作用、薬物アレルギーをご存知でしょうか。人間には、自身と外からの侵入した異物を区別し、異物を排除する機能(免疫)が備わっています。鼻水を出し異物を外に追い出したり、気道を狭くし異物が入らないように防いだりします。しかし、この機能が強く働きすぎると、全身の湿疹や急激な血圧低下、呼吸困難の症状を伴い死にいたることもあるのです。(アナフィラキシーショック)ペニシリン系やセフェム系等、抗菌薬によって、アレルギーを起こしやすい種類があります。一度、副作用(湿疹が出たり息苦しくなった等)が出た薬は、絶対に飲まないようにしなければなりません。命を危険にさらしてしまいます。

 

(アレルギーや免疫は非常に奥深いです。)

 

薬剤師は「抗菌薬の耐性の拡散防止に大きな役割を担う」といわれています。
困ったらことがありましたら、お近くの薬局の薬剤師にご相談ください。

解熱鎮痛薬(熱や痛みの薬)

発熱は、からだが風邪を治そうとしている防御反応です。発熱により、免疫力が上がり、白血球が活発になりウイルス等の異物を食べる作用(貪食作用)が増強されます。さらに、熱が高い方が、ウイルスは増えづらいため、ある程度の発熱は必要であり、むやみに解熱鎮痛薬を飲まないほうがいいのです。

 

解熱鎮痛薬は、その名の通り、ひとつの薬で「熱を下げる効果」と「痛みをとる効果」を併せ持ちます。つまり、喉の痛みや頭痛などの痛みに対し、薬を使ってしまうと、不必要な「解熱」が起こる可能性もあります。

 

また、解熱鎮痛剤の副作用は様々ですが、「胃腸障害」が代表的です。短期間の服用ならば、胃薬と一緒に飲む必要はありませんが、注意すべき点です。

 

生後6カ月から6歳までの子供の約7%が発熱によるひきつけを起こすといわれています。このことを防止するためや、39度以上の発熱での体力の消耗を防ぐためなど、解熱鎮痛薬は必要な場合もあります。

 

本当に必要な場合にのみ、解熱鎮痛薬を使うことが大切です。

鎮咳薬(咳止めの薬)

鎮咳薬は、咳をコントロールしている部分(咳中枢)の働きを抑えることで、効果を発揮します。脳に作用しますので、過剰に飲みすぎると息がしづらくなる(呼吸抑制)などの重たい副作用の可能性もあります。一般的には、便秘や眠気、口の渇きなどの副作用が注意点としてあげられます。

 

咳は、ほこりやウイルスなどの異物や痰を、からだの外へ追い出そうとしている防御反応です。からだを守るための、反応ですのでむやみに止める必要はありません。しかし、咳は1回で2キロカロリーを消費するため体力を消耗してしまいます。激しい咳で眠れない場合は、咳止めを飲みぐっすり休んだ方が、風邪の治りが早くなる可能性があります。

 

3週間以上の長期間の咳は、風邪でない可能性がありますので、隠れた病気にも注意が必要です。喘息やCOPD、逆流性食道炎、肺がん、結核などが疑われます。また、薬の副作用によっても咳が起こる場合もあります。

去痰薬(痰きりの薬)

痰とは、異物(ほこり、細菌、ウイルス)をからめとった粘液です。薬を使うことで、気道粘膜からの粘液分泌を促進、もしくは痰自体を溶解することによって、吐き出しやすくなります。菌の付着を防止し、風邪などの症状悪化を防ぐことはできるかもしれません。しかし、去痰薬に副作用がないわけではありません。
(例えば、カルボシステイン(ムコダインなど)は、嘔吐や湿疹、浮腫などの報告があります。)
また、痰が固い状態にしか使えない薬(ブロムヘキシン※)があるなど、薬の使い方には注意が必要です。
(※痰の粘稠度が低下し過ぎると、排出しづらくなる場合があるため)

 

去痰薬は、のどの不快な症状改善のために使うケースが多いようです。
病院に行く際には、痰の粘度などをしっかり伝えることで、適切な医薬品を選んでもらえます。

うがい薬

基本的に、炎症を抑える(喉の腫れや痛みに対しての)薬と、菌をやっつける(消毒)薬に大別されます。
前者は、アズレンなどの成分が入っており、後者は、ポビドンヨード(イソジンガーグルなど)の成分が入っている場合が多いようです。以前、風邪の予防には水でうがいすることが効果的であることを、京都大保健管理センターの川村孝教授(内科学・疫学)らが全国調査で確かめています。水のうがいで風邪の発症率が4割低くなったが、ポピドンヨードのうがいには明確な予防効果はなかったそうです。

最後に

薬が効かなくても、ほとんどの風邪は自然と治ります。
「ちょっと熱っぽいから早めに病院に行こうかな・・」の前に【風邪への対応】を見極める必要があります。
薬を使うことで、風邪の症状が楽になる場合も多いです。リスクと有益性を理解した上で、薬を使用することで得します。

 

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