SU薬|糖尿病治療薬

SU薬の特徴まとめ
①経口血糖降下薬(OHA)の中で、血糖降下力が最も強い薬剤である

 

②しかし、低血糖などの注意すべき点・問題点が多い

 

③できるだけ少量を使用すること

 

④使用する際も、治療の最終段階で使用する

 

⑤グリベンクラミド(オイグルコン)は使用を避ける

 

⑥効果が不十分な場合は、安易に増量などだらだら使用しないで、インスリン療法などへの変更を考慮する

 

⑦加齢、腎機能(腎症の進行)などを考慮して使用する

 

⑧コントロールが良好な場合は、早急に減量、中止、他の薬剤への切り替えを検討する

 

⑨SU薬にDPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を追加する場合には、SU薬をなるべく少量(最低でも半分以下)に減量する(低血糖に注意

 

SU薬は、最も古くから使用されている薬剤です。細小血管合併症(腎臓・網膜・神経の合併症)を防止する研究データ(エビデンス)があります。さらに安価であり、現在もよく使用されている経口血糖降下薬です。

 

かつては、選択する薬剤が少なく、インスリンやSU薬を用いるしかありませんでした。しかし、現在では多くの血糖降下薬が発売されており、SU薬の存在意義と使い方は限定されてきています。

 

SU薬の作用機序
SU薬は膵臓のβ細胞に働き、インスリン分泌を促進させます。詳しい作用機序としては、以下の図の通りです。β細胞のKATPチャネル〔SU受容体(SURl)〕に直接作用し、「ブドウ糖によるインスリン分泌作用」を増幅したり、ブドウ糖に依存せずインスリンを分泌させます。

 

SU薬の種類によっては、EPAC2/RAP1にも作用し、インクレチンの効果を高めます。これは、SU薬とDPP-4阻害薬を併用する時の相乗効果に関与しています。

 

また、SU薬はβ細胞以外のKATPチャネル〔SU受容体(SUR2A、2B)〕にも作用します。特に、心筋細胞のミトコンドリアKATPチャネル〔SU受容体(SUR2A)〕を抑制します。そして、IPC(※)を阻害するため、心筋虚血を合併した糖尿病患者には使用を避けるべきだと考えられています。

 

※IPC(Ischemic Preconditioning):心筋細胞が死なない(壊死を引き起こさない)程度の軽度の虚血状態(短時間の虚血と再灌流を数回繰り返すこと)を作ると、引き続いて起こる虚血障害に耐性ができる現象。

 


出典:ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック Ver.3 膵β細胞におけるインスリン分泌メカニズム

 

SU薬の種類
SU薬は数多く存在しますが、現在主に使用されている(というより使ってもいい)ものは、グリクラジド(商品名:グリミクロン)、グリメピリド(商品名:アマリール)です。

 

グリベンクラミド(商品名:オイグルコン、ダオニール)は、最強のインスリン分泌刺激薬ですが、以下の理由から、糖尿病専門医においては使われなくなってきています。もちろん、グリメピリドがグリベンクラミドに比べてとても安全というわけではありません。

 

グリクラジド(商品名:グリミクロン)
膵β細胞のSURlへの選択性が高く(心臓への作用が少なく)、IPCを消失させません。ここで紹介する3剤のなかでは、作用時間が比較的短いです。また、EPAC2/RAP1に作用しないため、DPP-4阻害薬などと併用しやすいといわれます。(それぞれの作用の独立しているため)

 

グリメピリド(商品名:アマリール)
SU薬の中では、最も遅く発売された薬剤です。インスリンの分泌作用はグリベンクラミドに劣りますが、膵臓以外への作用(膵外作用:インスリン抵抗性改善など)をもっています。このため、総合的な血糖降下作用は、グリベンクラミドと同等であると考えられています。

 

膵臓以外のSURにも作用しますが、心筋ミトコンドリアKATPチャネル(SUR2A)には作用せず、IPCを阻害しないといわれます。IPCは阻害しないとはいえ、心血管系の死亡も全死亡もグリベンクラミドとともに有意に多いとの報告があります。

 

虚血性心疾患合併例には使用しないほうが無難だといわれます。低血糖に関してグリベンクラミドより安全と思われている節もあるようですが、その真相は不明です。低血糖に関しては、他のSU薬同様に注意が必要です。

 

グリベンクラミド(商品名:オイグルコン、ダオニール)
現在市販されているSU薬の中で最も強いといわれます。作用の持続時間は、グリクラジド(商品名:グリミクロン)と比べてかなり長いです。心筋ミトコンドリアKATPチャネル(SUR2A)に結合し、IPCを阻害します。

 

虚血性心疾患を合併していたり、その可能性のある糖尿病患者には使用すべきではありません。効果は高いのですが、使用を限定する医療機関が増えています。

 

40~50歳代で使用開始した方が、70~80歳代になってもそのまま漫然と使用されているケースがあります。糖尿病や加齢が原因となり腎機能が低下します。それに伴い、低血糖による昏睡のリスクが増加します。定期的に、内服薬の減量や中止などの見直しをすることが大切です。

 

SU薬の詳しい特徴
門脈内インスリン濃度を上昇させます。しかし、インスリン追加分泌の欠如を補完できないため、食後高血糖の改善は期待できません。食前や夜間の低血糖に注意が必要です。

 

血糖がコントロールできていない方は、継続すると膵β細胞の疲弊を招きます。減量できるかの判断を定期的に行いながら、なるべく少量かつ効果がある用量で使用します。ファーストチョイスで使用せず、併用療法の一助に止めるべきだといわれます。

 

グリクラジド(商品名:グリミクロン)は10あるいは20mg〜、グリメピリド(商品名:アマリール)は0.25あるいは0.5mg〜、グリベンクラミド(商品名:オイグルコン)は推奨されません。

 

体重の増加が起こることがあるので注意しましょう。チアゾリジン薬(商品名:アクトス)やインスリンと併用する場合は、特に注意が必要です。

 

高齢者には、併用薬の最後の手段とし、使わないで済めばそれに越したことはありません。もし使用する場合でも、きわめて慎重かつ極少量から使用するべきです。さらに、腎機能が低下している場合にも使用するべきではありません。HbA1cが6.9%以下(常時)となるようであれば、速やかに減量または中止するべきです。(空腹時や夜間の無自覚性低血糖の可能性があるため)

 

基礎インスリンと併用している場合にも同様に、血糖コントロールが改善すれば、まず最初にSU薬を減量または中止します。SU薬にDPP-4阻害薬(あるいはGLP-1受容体作動薬)、SGLT2阻害薬を追加する場合、SU薬を1/2以下に減量してから使用します。(血糖値をあわてて下げる必要はありません。)

 

SU薬の最大の問題点は、血糖のいかんに関わらずインスリンを分泌し、その作用が強力かつ長時間に及ぶことです。食後の血糖など(下げるべき血糖)を下げられず、食前や夜間などの下がってほしくないところを下げてしまいます。

 

血糖の平均を反映するHbAlcの値が改善していても、実は気がつかれない低血糖がある場合もあります。食後血糖の変動(グルコース・スウィング)が大きいため、低血糖、低血糖昏睡、動脈硬化増悪(心血管イベントを含む)のリスクの面でも好ましくありません。

 

また、無自覚のうちに低血糖を起こしていると、致死的な不整脈のリスクがあります。特に高齢者、腎機が能低下した方、虚血性心疾患の方には使用すべきではありません。

 

SU薬による低血糖昏睡
SU薬を使用する場合、低血糖による昏睡に注意が必要です。DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬を追加すると、低血糖昏睡の危険性が高まるため、SU薬をなるべく少量(最低でも半分以下)に減量することが望まれます。実際に、注意喚起が行われているにもかかわらず、低血糖昏睡の症例数は減っていないという現状があります。

 

以下のような方には、より注意が必要ですので、医師または薬剤師にご相談ください。

  1. 高齢者
  2. 腎機能が低下している方
  3. グリベンクラミド(オイグルコン)を内服している方
  4. 血糖コントロールが良好な方(目安として、HbA1cく7.0%)
  5. 薬への理解力が低下している方(認知症も含む)
  6. シックデイのルール(食事ができない時の対応)を知らない方
  7. 多剤を服用している方

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