オグリタゾン|糖尿病治療薬

ピオグリタゾン(チアゾリジン薬)の特徴まとめ
脂肪細胞の小型化を誘導し、アディポネクチンを増加させ、インスリン抵抗性を改善する。

 

②肥満した糖尿病患者に効果が出やすい(中には著効する方が存在する)。

 

③糖尿病発症予防、心血管疾患、脳卒中抑制に有効だという研究データ(エビデンス)がある。

 

④副作用として体重増加、浮腫、心不全の増悪がある。

 

⑤膀脱がんの既往あるいは疑いがある場合には禁忌。

 

骨粗しょう症のリスクの高い方は、慎重に使用する。

 

⑦血糖低下作用と上記リスクを個別に考えて使用する。

 

ピオグリタゾン(チアゾリジン薬)の作用機序
チアゾリジン薬は、核内受容体のPPARyに結合して効果を発揮します。脂質代謝、インスリン感受性、脂肪組織の分化などに関わる遺伝子の発現を調節し、インスリン抵抗性を改善します。特に、アディポネクチン(善玉アディポサイトカイン)を増加させ、遊離脂肪酸、TNF-a、レジスチン(悪玉アディポサイトカイン)を減少させます。

 


出典:ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック Ver.3

 

効能・効果と研究データ(エビデンス)
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の常用量は、15~30mg/日(朝食前または後)です。30mgを服用すると、平均でHbAlc1%程度の改善がみられます。中には、有効例としてHbA1cが2~3%改善することもあります。有効例の特徴としては、肥満、インスリン抵抗性を有する方、女性があげられます。

 

女性はSU剤との併用で浮腫が起こりやすいため、7.5mgあるいは15mgの低用量から開始し、塩分制限をすると良いです。他の経口血糖降下薬やインスリンと併用することができます。インスリンと併用する際は、特に浮腫が起こりやすいので注意が必要です。

 

PRACTICAL Studyにおいて単独、併用投与ともHbA1cを約1%改善させたという研究データがあります。この研究において、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は、他剤よりもインスリン導入までの期間を延長させています。

 

また、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)を追加することで、心筋梗塞の再発を28%、脳卒中の再発を47%抑制しました。この結果として、2009年脳卒中治療ガイドラインには、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は脳梗塞再発予防薬としてグレードBに位置付けられています。

 

血糖低下作用以外の作用と研究データ(エビデンス)
①糖尿病の新規発症を抑制する
耐糖能異常者から糖尿病への進展を、プラセボ群と比較して72%抑制し、約50%が正常耐糖能に改善しました。(研究データ:ACT NOW Study)

 

②冠動脈プラークの進展を抑制する
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)とグリメピリド(商品名:アマリール)で、冠動脈プラークの進展を血管内超音波検査で比較したところ、ピオグリタゾンはプラーク容積の有意な減少を認めました。(研究データ:PERISCOPE Study)

 

③脂質(コレステロールなど)を改善する
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は、総コレステロール、LDL-C(悪玉コレステロール)には影響しないが、中性脂肪を約40%低下させ、HDL-C(善玉コレステロール)を約5%上昇させた報告があります。(研究データ:欧米でのメタ解析)

 

④脂肪肝への作用
非アルコール性脂肪肝(NASH)を改善したという報告があります。

 

注意するべき副作用
①体重増加
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)を服用すると、海外で平均3~5kg、日本でも0.5~2kgの体重増加が報告されています。Na(ナトリウム)再吸収増加に伴う浮腫、脂肪細胞の分布の変化が原因だと考えられています。

 

②浮腫、心不全
腎尿細管のナトリウムチャネルがPPARγにより活性化され、Na再吸収が亢進することが原因です。つまり、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)を服用すると、Na(ナトリウム)が体の中にとどまりやすくなります。ピオグリタゾンの体液貯留作用により(体内の水分が外に出て行きにくくなるため)、心不全が増悪する可能性があります。

 

③低血糖
ピオグリタゾン(商品名:アクトス)だけを服用しても低血糖を起こす危険性は低いです。しかし、インスリンやインスリン分泌刺激薬との併用する時には注意が必要です。

 

④骨折リスク
チアゾリジン薬の仲間であるロシグリタゾン(日本未発売)を服用した際に、骨折のリスクが上昇したと報告されています。これはPPARYの作用により骨芽細胞が減少するためと説明されています。ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の投与においても、骨折リスクの高い患者に投与する際は注意が必要です。

 

⑤膀脱がん
150万人の糖尿病患者のデータを解析したところ(フランスで行われたCNAMTS研究)、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)投与群で膀脱がんの発生が22%増加したと報告されています。

 

しかし、米国で行われたKPNC研究の報告(10年間)では、ピオグリタゾン投与と膀脱がん発生リスクとの間には関連性は認められませんでした。(膀脱がん発生リスクとピオグリタゾンの投与期間、累積投与量あるいはピオグリタゾン投与開始からの期間との間のいずれにおいても関連性は認められませんでした。)

 

日本の製造販売後調査においても、膀脱がん発生増加は報告されていません。しかし、添付文書には膀脱がんに関して注意を促す記述があるので、その注意を守るべきだと考えられます。

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