αグルコシダーゼ阻害薬|糖尿病治療薬

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の特徴まとめ
食後血糖を改善する薬剤である

 

②インスリンや他の経口血糖降下薬と併用が可能である

 

③体重増加をきたさない

 

④単独で使用する場合、低血糖の危険がない

 

⑤HbA1cの改善率は0.5~1.0%にとどまる

 

⑥他の薬剤と併用し低血糖を起こした場合、ブドウ糖を摂取する必要がある

 

⑦腹鳴(ふくめい)、下痢、放屁などの消化器症状の副作用がある(頻度が高い)

 

⑧特に、腹部手術後の患者には注意が必要である

 

⑨食前に服薬が必要であること、上記の副作用があることから、服用を中断する方が少なくない

 

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)の作用機序
白米、パンなどの炭水化物は、唾液や膵液中のアミラーゼにより二糖類に分解され、その後小腸に運ばれます。小腸上皮では、αグルコシダーゼにより単糖類(グルコースやフルクトースなど)に分解され、体内へ吸収されます。

出典:ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック Ver.3

 

αグルコシダーゼ阻害薬は、小腸上部において「二糖類の分解を阻害し、糖質が小腸全体でゆっくり吸収するような効果」を発揮します。そうすることで、血糖の急激な上昇が是正され、食後高血糖を改善させる(血糖が上がりすぎないようにする)のです。

出典:ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック Ver.3

 

食後高血糖と心血管イベント
HbAlc8.4%以下の方において、食後の高血糖がHbA1cを上昇させている(影響が大きい)と考えられています。αグルコシダーゼ阻害薬は、HbAlcを0.5~1.0%程度改善させます。

 

この改善率はわずかですが、食後高血糖のマーカーである1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)の上昇がみられ(つまり食後血糖を低下させ)、HbAlcの質を改善する作用があります。

 

さらに、グリニド薬やDPP-4阻害薬と併用することで、血糖がより改善すると報告されています。糖負荷後や食後の高血糖が心血管イベント動脈硬化進展の危険因子であることが証明されています。(研究データ:欧州ではDECODE study、日本ではFunagata Study)

 

特に、糖尿病の大血管障害(心臓や脳の疾患)を予防のためには、食後の血糖を改善させることが大切です。糖尿病患者にアカルボース(商品名:グルコバイ)を投与し、心血管イベントの発症リスクを49%低下させたという報告があります。(研究データ:STOP-NIDDMStudy)

 

血糖低下作用以外の作用
①糖尿病の新規発症を抑制する
IGT患者(※)にアカルボース(商品名:グルコバイ)を投与したところ、プラセボ群に比べて糖尿病発症を25%低下させ、さらにIGTから正常耐糖能への改善例も増加させました。(研究データ:STOP-NIDDM Study)

 

日本人を対象にした研究において、ボグリボース(商品名:ベイスン)が、糖尿病発症を40%抑制し、正常耐糖能への移行を1.5倍増加させたという報告もあります。(研究データ:VICTORY TRIAL)

 

②新規高血圧患者の発症を抑制する
アカルボース(商品名:グルコバイ)を使用することで、新規高血圧患者の発症を34%抑制したという報告があります。(研究データ:STOP-NIDDM Study)

 

③インクレチンヘ作用する
インクレチン(※2)の代表として、GIP(上部小腸のK細胞から分泌される)とGLP-1(下部小腸のL細胞から分泌される)があります。αグルコシダーゼ阻害薬を使用すると、下部小腸での糖質の吸収を増加させるため、下部小腸のL細胞を刺激します。

 

この結果、GLP-1の分泌を亢進させることが期待されます。ミグリトール(商品名:セイブル)を服用すろと、GLP-1が上昇し、GIPが抑制されるという報告があります。(研究データ:秋田大学の成田ら)

 

※ 正常型と糖尿病型のいずれにも含まれない状態。「糖尿病予備群」ともいわれる。
※2 DPP-4阻害薬のページを参照

 

 

使用の対象者
①単独投与
空腹時血糖150mg/dL以下、食後血糖が200mg/dL前後の軽症の2型糖尿病患者。
IGT患者:ボグリボース(商品名:ベイスン)には耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制に適応がある。

 

②他の薬剤との併用
追加によりHbAlc0.5~1.0%の低下が期待できる。

 

注意するべき副作用
①消化器症状
上部小腸において、糖質の吸収を阻害するため、吸収しきれない二糖類が大腸に流入します。この二糖類が細菌に分解されることにより、ガスを産生します。その結果として、腹部膨満感、放屁、下痢などの副作用が出現します。

 

この副作用の頻度は高いのですが、徐々に慣れていきます。薬剤を使用開始する場合、「夕1錠から開始し、1週毎に増やしていく」などの対策が有効です。この副作用と「食直前に服用する薬であること」が原因で、服用を継続できない方がいらっしゃいます。

 

最近では、腸管内で発生するガスが水素ガスであり、生体内で抗酸化作用を有する可能性が示唆され注目を浴びています。

 

②肝障害
アカルボース(商品名:グルコバイ)やボグリボース(商品名:ベイスン)では、劇症肝炎を含む肝障害が報告されています。定期的な肝機能検査が必要です。ミグリトール(商品名:セイブル)には、重篤な肝障害の報告はありません。しかし、小腸で吸収されるため、肝機能検査が望ましいと考えられています。

 

③低血糖
単独で使用する場合では、低血糖を起こしません。しかし、インスリンやインスリン分泌刺激薬と併用する場合には、注意が必要です。もし低血糖を起こした場合は、ブドウ糖を使用します。(砂糖などの二糖類では血糖が上がりにくいため)

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