地域包括ケアシステムと在宅医療

【地域包括ケアシステムの背景】
在宅医療を行うことで、心身ともに良好となる方も多いことは事実です。しかし、一般的には「病院に入院する」方が、在宅医療よりも安心かつ快適だと考えられています。入院していると、3食の食事や睡眠、掃除、ゴミだしを自身で行う必要がなく、医療のスペシャリストに常に囲まれて過ごすため、安心かつ快適だといわれます。

 

しかし、病院のベッドの数(病床数)は限られているため、希望するすべての人が入院できるわけではありません。そこで、入院と同じような「安心」と「快適さ」を、在宅で療養しながら受けることができればいいのではないかと考えられるようになりました。

 

 

【地域包括ケアシステムとは】
医療、介護、保健、福祉を切れ目なく結びつけ、地域のすべてをひっくるめて(包括的に)高齢者をケアするシステムを厚生労働省が推進しています。

 

高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的とし、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制を「地域包括ケアシステム」といいます。

 

包括的な支援とは、医療、介護、介護予防(※)、住まい、生活支援が含まれます。(※介護予防:要介護状態もしくは要支援状態となることの予防、または要介護状態もしくは要支援状態の軽減もしくは悪化の防止)

 

地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域、具体的には中学校区を単位として想定されています。このシステムによって、入院も在宅療養も遜色ないものとして考えられています。

 

 

平成25年3月 地域包括ケア研究会報告書より

 

「介護」、「医療」、「予防」という専門的なサービスと、その前提としての「住まい」と「生活支援・福祉サービス」が相互に関係し、連携しながら在宅の生活を支えています。地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として、各市町村が「地域包括支援センター」を設置しています。

 

地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上、福祉の増進を包括的な支援を目的としています。

 

 

【すまいとすまい方】
すまい(住まい)は、生活の基盤です。本人の希望にかなった住まい方の確保が前提ですが、そこにはその方の経済力を考慮しなければなりません。また、プライバシーと尊厳が十分に守られることも必要だと考えられています。

 

 

【生活支援・福祉サービス】
心身の能力の低下、経済的理由、家族関係の変化などがあっても、尊厳ある生活が継続できるよう生活支援を行う必要があります。

 

生活支援には、食事の準備など、サービス化できる支援から、近隣住民の声かけや見守りなどのインフォーマルな支援まで幅広く、その担い手も多様です。生活困窮者などには、福祉サービスとしての提供も必要だと考えられています。

 

 

【介護・医療・予防】
ひとりひとりの抱える課題に合った「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」が提供されなければなりません。この際に、切れ目のない連携も必要だと言われています。(チーム医療)

 

 

【本人・家族の選択と心構え】
単身・高齢者のみ世帯がどんどん増えています。在宅生活を選択する意味を、本人や家族が理解し、そのための心構えを持つことが最も重要です。

「自助・互助・共助・公助」からみた地域包括ケアシステム


平成25年3月 地域包括ケア研究会報告書より

 

 

【費用負担による区分】
「公助」は税による公の負担、「共助」は介護保険などリスクを共有する仲間(被保険者)の負担であり、「自助」には「自分のことを自分でする」に加え、市場サービスの購入も含まれます。

 

これに対し、「互助」は相互に支え合っているという意味で「共助」と共通点があるが、費用負担が制度的に裏付けられていない自発的なものとされます。

 

 

【時代や地域による違い】
2025年までは、高齢者のひとり暮らしや高齢者のみ世帯がより一層増加します。そして、「自助」「互助」の概念や求められる範囲、役割が新しい形になります。都市部では、強い「互助」の期待が難しい一方、民間サービス市場が大きく「自助」によるサービス購入が可能となります。

 

都市部以外の地域は、民間市場が限定的だが「互助」の役割が大きくなります。少子高齢化や財政状況から、「共助」「公助」の大幅な拡充を期待することは難しく、「自助」「互助」の果たす役割が大きくなると意識した取組が必要だとされています。

今後の地域包括ケアシステムと薬局

地域包括ケアシステムの構築の本質は、「まちづくり」であるといわれます。一般の商店や、交通機関、金融機関、コンビニ、薬局など、あらゆる社会の仕組みが、2025年以降に発生する大きな課題への対応に挑戦しなくてはなりません。

 

地域内の一般商店や民間企業、や高齢者自身が地域を支える主役になるべきだといわれています。そのために、自治体が「まちづくり」の方針を明確にする必要があり、自治体の首長のリーダーシップが何よりも重要です。

 

まちの薬局には、適切な薬物療法の提供(在宅医療・外来医療)、困ったときの相談窓口(医療・介護・健康・栄養相談)、健康の維持・増進(一般用医薬品、衛生材料、健康食品など)が求められています。

 

【薬剤師じゃなくても薬がわかる本】

 

 

 

 

 

 


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