薬局における地域活動の取り組み

薬局薬剤師は、薬局という地域に密着した拠点を通じ、医薬品の供給・適正使用への関与にとどまらず、地域社会や生活者の薬事・公衆衛生に関わります。個々の薬局・薬剤師だけでなく、地域の薬剤師会などの組織的な活動も行われています。

 

 

【主な地域活動】

  • 禁煙キャンペーン
  • メディアによる医療・健康情報の健全化
  • 「健康支援拠点」としての薬局の活用
  • 薬物乱用防止活動
  • ドーピング防止活動(アンチ・ドーピング)
  • 災害対策
  • 薬の適正使用に向けた教育・啓発活動
  • 毒物劇物の管理
  • 環境有害物質、放射性物質等に関する啓発活動
  • 害虫・ねずみなどの駆除相談・指導
  • 消毒薬の使用方法の指導
  • 感染症情報収集活動への協力
  • 自殺、うつ対策
  • 認知症の早期発見対策
  • 献血協力推進活動
  • 児童・生徒の駆け込み寺として薬局を活用 

国が求める地域活動の取り組み

​薬局薬剤師が「かかりつけ薬剤師」になるためにも、医療に係る地域活動の取組への参画が求められます。具体的には、次のような活動に主体的・継続的に参画していることです。

 

・地域包括ケアシステムの構築に向けた、地域住民を含む、地域における総合的なチーム医療・介護の活動であること。
・行政機関や学校等の依頼に基づく医療に係る地域活動(薬と健康の週間、薬物乱用防止活動、注射針の回収など)への主体的・継続的な参画(ただし、薬局内でのポスター掲示や啓発資材の設置のみでは要件を満たしているとはいえない。)
・行政機関や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力のもとで実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣
・委嘱を受けて行う学校薬剤師の業務等
・地域において人のつながりがあり、顔の見える関係が築けるような活動であること。具体的には、地域における医療・介護等に関する研修会等へ主体的・継続的に参加する事例として以下のようなことが考えられる。
1.地域ケア会議など地域で多職種が連携し、定期的に継続して行われている医療・介護に関する会議への主体的・継続的な参加
2.地域の行政機関や医療・介護関係団体等(※)が主催する住民への研修会等への主体的・継続的な参加

 

都道府県や郡市町村の医師会、歯科医師会及び薬剤師会並びに地域住民に対して研修会等サービスを提供しているその他の団体等
出典:平成28年5月19日 疑義解釈の送付について(その3)

地域活動の具体的な内容

【薬物乱用防止活動】
近年、麻薬・覚醒剤などに加え、「合法ハーブ」や「お香」などと称し公然と販売される危険ドラッグが大きな社会問題となっています。薬物の乱用を防止するためには、「規制」「取締」「啓発」のそれぞれを強化していく必要があります。「啓発」に関して、薬剤師は麻薬・覚醒剤などの薬物乱用防止活動に貢献してきました。私も、小学校と中学校の学校薬剤師として、危険ドラッグやシンナー、たばこなどについて「薬物乱用防止教室」を行っています。

 

 

【ドーピング防止活動(アンチ・ドーピング)】
現在、新たな薬剤師の活動として、ドーピング防止活動がスタートしている。平成21年度(2009年度)からは公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)による「公認スポーツファーマシスト認定制度」が開始されました。薬剤師に求められているのは、競技者およびスポーツ愛好家に対し、くすりの正しい使い方の指導、くすりに対する健康教育の普及・啓発を行い、ドーピング防止に努めることです。また、疾病の治療のために医薬品を使用してしまったことでドーピング検査において陽性となってしまう、いわゆる「うっかりドーピング」を防止するための助言者となることも重要な役割とされています。

 

 

【災害対策】
東日本大震災において、薬剤師による災害時の支援活動は、医療救護所、医薬品集積所、避難所などの様々な状況において実績をあげました。今後、阪神・淡路大震災、中越大震災、東日本大震災の経験を基に、従来の想定を超える災害に備え、医薬品供給体制、備蓄および医薬品管理、薬事・公衆衛生、被災者の健康維持などの活動について、行政機関等との協定および他の医療職種との連携をさらに強化することが必要とされています。
また、強毒性の新型インフルエンザ等、新たな感染症によるパンデミックに対する備えについても、薬剤師が災害対策に準じ、薬剤供給と公衆衛生活動に対応できる体制を確保することが求められています。

 

 

【自殺、うつ対策】
毎年、自殺者が3万人を超える状況が続く中、平成18年(2006年)に自殺対策基本法が制定され、その第二条には自殺対策に関する基本理念が示されています。

 

 

第二条
1 自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。
 
2 自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。
 
3 自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。
 
4 自殺対策は、国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない。

 

 

厚生労働省の自殺・うつ病対策プロジェクトチームが取りまとめた「過量服薬への取り組み」では、薬剤師にハイリスク患者への声かけや過量服用患者の早期発見など、ゲートキーパーとしての役割が期待されています。

 

また、薬剤師は、自殺対策基本法の趣旨を理解し、自殺防止に対する役割を新たな職能として認識することが求められています。

 

さらに、全ての薬局において、調剤、一般用医薬品の供給、健康相談応需などの地域に密着した「かかりつけ薬局・薬剤師」の機能を活用し、ポスター掲示などの啓発活動、患者や相談者への声かけ、過量服薬モニタリング、受診勧奨、見守りなど、自殺防止のゲートキーパーとして積極的に活動しなければなりません。

 

 

メディアによる医療・健康情報の健全化
現在、国民はテレビ、インターネット等のメディアを通じて大量の情報を入手できる時代となりました。一方、それらの情報は玉石混交であり、健康被害を引き起こす有害な情報も大量に存在します。

 

また、仮に情報自体が正しい場合でも、解釈や利用方法を誤ることで有害な結果をもたらすこともあります。薬剤師は、薬学を基盤とした科学的なエビデンス(根拠)に基づき、情報の選択、評価、有効活用、結果の確認を行い、地域住民に対し、正しい情報を提供していかなければなりません。

 

「健康サポート」としての薬局の活用
「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(根拠法:健康増進法)において、「健康を支え、守るための社会環境の整備」のため、「地域住民が身近で気軽に専門的な支援・相談が受けられる民間団体の活動拠点数の増加」が目標として掲げられ、その活動拠点の例として「地域住民の健康支援・相談対応等を行い、その旨を積極的に地域住民に周知している薬局」が示されました。

 

今後、薬局が地域住民の健康課題に対応することができる施設としてその機能を充実・強化するとともに、地域住民が利用しやすい仕組みの構築や周知活動の充実に向けた取り組みが重要となります。

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