「薬は水で飲みましょう」の真実の続き
「薬は水で飲みましょう」の真実(前編)のつづきです。前編では、薬を水で飲む意味を、薬の作用の吸収のメカニズムとともに解説しています。アルコールと薬の飲み合わせも前編にあります。読まれていない方は、前編を先に読むことをおすすめします。
薬の効果に影響する飲料
カフェインを多く含む飲料(緑茶、紅茶、コーヒーなど)
テオフィリン(一部商品名:アネトン咳止め顆粒、テオドール、テオロングなど)やアミノフィリン(一部商品名:ネオフィリンなど)は、気管支を広げる効果を持ち、咳止めの薬や喘息の薬として使われます。
テオフィリンやアミノフィリンは、カフェインと同じ系統の成分であるため、カフェインを多く含む飲み物と一緒に飲むと作用が強く出てしまいます。
気管支を広げる作用であれば良いのですが、副作用である不眠や手のふるえ、吐き気などを起こしてしまう危険性があります。眠気覚ましや栄養ドリンクにも、カフェインが多く含むものがあるため、注意が必要です。
タンニンを多く含む飲料(緑茶やコーヒーなど)
「貧血を治療する鉄剤は、お茶と一緒に飲んではいけません」と、よくいわれます。これは、緑茶やコーヒーの中に含まれるタンニンという成分が鉄とくっつくため、鉄の吸収が悪くなると考えられているためです。
しかし、最近では、多少の緑茶やコーヒーでは、治療に支障があるほどの「吸収の低下」は起こらないだろうといわれています。
少しでも吸収が多い方が良いと思われる方は、鉄剤とお茶を1~2時間あけて飲むことをおすすめします。そうすると、お腹の中で鉄剤とタンニンがくっつくことはありませんので、吸収が低下することはほとんどありません。
牛乳
テトラサイクリン系抗生物質(一部商品名:ビブラマイシン、ミノマイシンなど)は、牛乳中のカルシウムとくっつき(キレートを形成し)、腸管から吸収されにくくなります。
つまり、牛乳と一緒に飲むことで、抗生物質としての効果が得られない危険性があるということです。その吸収は、3分の1~4分の1に低下するともいわれます。
また、牛乳はアルカリ性で、胃酸を中和する働きがあります。胃酸が中和された状態で薬を飲むと、薬の溶け方が変わってしまう可能性があります。
本来腸で溶けて効果を発揮する便秘薬(一部商品名:コーラック)などは、牛乳で服用すると胃の中で錠剤を覆っているコーティングがはがれてしまい、有効成分が溶け出します。この場合、効果が下がったり、胃への刺激で吐き気が出るなどの危険性があり注意が必要です。
グレープフルーツジュース
からだの中に入った薬は、肝臓で代謝をうけて、からだの外に排泄されます。グレープフルーツジュースの中に含まれるフラノクマリンという物質は、薬の代謝に関わる一部の酵素CYP3A4(しっぷすりーえーふぉー)とくっつく作用をもちます。
本来CYP3A4で代謝される薬が、代謝されづらくなり、からだの中に残りやすくなります。つまり、薬の効果が長くなったり、強くなる危険性があるということです。
主に、病院で処方される医薬品に注意が必要です。
例えば、カルシウム拮抗薬という分類の血圧を下げる薬であるニフェジピン(一部商品名:アダラートなど)、ニソルジピン(一部商品名:バイミカードなど)、高脂血症を治療するアトルバスタチン(一部商品名:リピトールなど)、睡眠導入剤であるトリアゾラム(一部商品名:ハルシオンなど)、免疫抑制剤であるシクロスポリン(一部商品名:ネオーラルなど)が、グレープフルーツによる影響を受けるという報告があります。
しかし、これはほんの一部であり、グレープフルーツと一緒に飲むことが望ましくない薬は多く存在します。
そして、グレープフルーツだけが悪者にされていますが、ハッサクやブンタン、ダイダイ、ポンカン、いよかんなどの柑橘類も、グレープフルーツ同様に注意しなければなりません。温州みかんやオレンジ、レモンなどは問題ありません。
グレープフルーツジュースと同時でなければ問題ないという意見もありますが、グレープフルーツの影響は長い場合は4日程度続くといわれています。現在飲んでいる薬を再確認し、飲み合わせの危険がある場合は、グレープフルーツなどを避けることが大切です。
「柑橘系が大好きで、避けることはできない」という方は、同じような効果の薬(同種同効薬)への薬の変更が可能かどうか、医師や薬剤師にご相談ください。
スポーツドリンクなどの飲料、高度の高い水(ミネラルウォーター)
ミネラルウォーターは硬度によりますが、スポーツドリンクやミネラルウォーターには、カルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルを含みます。
一部の薬は、ミネラルとくっつき、吸収されづらくなります。つまり、ミネラルによって、薬の効果が下がる危険があるということです。
代表的な薬の例は、ビスホスホネート系の骨粗鬆症の治療薬であるミノドロン酸(一部商品名:リカルボン、ボノテオなど)、アレンドロン酸(一部商品名:フォサマック、ボナロンなど)、リセドロン酸(一部商品名:ベネット、アクトネルなど)があげられます。