薬を減らすだけがポリファーマシー対策ではない


薬を減らすだけがポリファーマシー対策ではない

薬を減らすだけがポリファーマシー対策ではない

ポリファーマシーとは、明確な基準はありませんが、「必要以上に薬をのんでいる状態」をさします。近年、ポリファーマシーによる有害事象飲み間違いなどが問題となっており、「不適切な処方薬」を検出するツールが広がっています。

 

しかし、ただ単純に薬を減らせばいいというわけではありません。薬の使用は、患者さんに関わる人たち(主に医療者)が「合意形成を行いながら、開始、継続、中止」を行なっています。

 

つまり、不適切な処方薬を中止するだけが、「ポリファーマシー対策」ではありません。薬を一度に整理することは、危険である場合(すぐに薬が増える場合など)があります。

 

患者中心のポリファーマシー対策:NHS(イギリスの国営医療サービス事業)

 

①患者を評価する

 

②コンテクストと全般的ゴールを明らかにする

 

③リスクのある薬を同定する

 

④個々の患者のコンテクストの中でリスクと利益を評価する

 

⑤中止、減量継続、開始について合意する

 

⑥他の医療者にアクションを伝える

 

⑦定期的にモニター、調節する
→①に戻る。

 

出典:患者中心のポリファーマシー対策の7ステップ,総合診療のGノート(10月号)2016

 

①患者を評価する(寄り添う)
ポリファーマシー対策を行うためには、まず最初に「患者さん(またはその家族)の薬に対する考えや価値観」を確認する必要があります。一般的に、患者さんは医療者に遠慮しており、薬の問題について話してくれません。

 

一例ですが、「本当は薬が苦いので、あまり飲みたくない」、「効果がないので、薬を勝手にやめている」などの問題は、日常茶飯事です。

 

「患者さんが実際抱えている問題」と「医療者が想定する問題点」がすぐに一致することはほぼありません。しかし、この問題を共有しておかなければ、ポリファーマシー対策はうまくいきません。

 

医療者は、患者さんとじっくりと会話し、考えや価値観を聞き出すことが大切です。

 

「患者さん(と、その家族)の考え・価値観」の確認事項(例)

  • 薬(薬物療法)に関して、何を求めているのか、そしてその優先順位を決める
  • どの薬に、どのような問題があるのか
  • 日常生活の中で、薬を服用することがどのように行われているのか、そしてうまくいっているのか

 

②コンテクストと全般的ゴールを明らかにする
糖尿病、脂質異常症、高血圧、骨粗鬆症、逆流性食道炎など、高齢になると様々な健康問題(病気)が起こります。その全てに対して、治療ガイドライン通りに薬を出していると、必然的にポリファーマシーになってしまいます。

 

治療ガイドラインは参照しますが、患者さんの全体像と今後を把握して服薬について考える必要があります。その際に、次の5点に注意しましょう。

  1. 患者の機能・生命予後・脆弱性の全てを考慮した薬を服用しているか
  2. 病歴・社会歴・服用歴に対して、適切に対応した薬を服用しているか
  3. 全般的な健康ゴールに合致した薬を服用しているか
  4. 薬が患者にいい影響を与えているか
  5. 患者の寿命などを考慮しているか(不必要な予防薬を服用していないか)

 

③リスクのある薬を同定する
次に、不適切処方の可能性のある薬を同定(※)しましょう。薬のエビデンス(根拠)について、しっかりした知識を持っておくことが大切です。その一つとして、NNT(Number needed to treat)を知っておきましょう。

 

NNTとは、その病態をもつ患者(同じ年齢、性別、基礎疾患)に対して、その薬の使用(治療)をする場合、何人に使用すればそのうちの1人に効果が見られるかを表した数です。治療必要数ともいわれる「疫学の指標」の一つです。

 

このNNTを患者さんに説明したのち、患者さんの考えや価値観をもとに「薬についての話し合い」を行うことが大切です。こうすることで、医療者と患者さん(と、その家族)の双方が納得いく医療になるはずです。

 

※以下の指標を参照すると良いでしょう。

 

④個々の患者のコンテクストの中でリスクと利益を評価する
患者さんのおかれている状況の中で、リスクと利益を評価する必要があります。そして、不適切処方を見直す優先順位について、医療者と患者さん(と、その家族)で話し合いましょう。

 

ここで、患者さんの考える優先順位と臨床的優先順位が合致しないことがあります。このため、医療者が不適切処方だと判断しても、そのまま薬を継続してしまう場合があります。しかし、以下の5点に注意しながら、焦らず対応ことが大切です。

  1. 病状は活動性か日活動性か
  2. 薬の服薬期間はどの程度か
  3. 現在も服薬を継続していることは妥当か
  4. 薬によって健康問題は解決しているか
  5. 上記について、患者は理解しているか

 

医療者から患者への質問例
「あなたの飲んでいる薬について聞かせてください。どうしてその薬を飲みはじめたのですか。」
「その薬は効いていると思いますか。今も必要でしょうか。」
「どうしても続けないといけないと思う薬はどれでしょうか。」

 

⑤中止、減量継続、開始について合意する
薬の中止、減量継続、開始について合意形成をしましょう。④まで実施できれば、どの薬を継続して、どの薬を中止しても良いのか、ある程度区別できるようになっています。

 

そこで、これからどうしていくのか(薬の中止、減量継続、開始)について、医療者と患者さん(と、その家族)で合意形成のための話し合いをはじめましょう。

 

例えば、患者さんが減らしたい薬をいくつかあげてもらい、その中で医療者が「減らしても影響が少ないと判断する薬」から中止や減量を行います。

 

⑥他の医療者にアクションを伝える
患者さん(と、その家族)以外の「関係する人たち(医師、薬剤師、介護職員、その他の医療者)」に薬の変更を伝えましょう。

 

「患者が薬を服用できていなかった」などの状況、「患者さんと合意した上で薬が減った」という状況などの情報提供です。

 

「1人の患者」と「1人の医師」だけではなく、患者さんを取り巻く(関係する)人たちの協力があると、より良いポリファーマシー対策が可能になります。

 

⑦定期的にモニター、調節する
最後に、定期的に状況を確認し、フォローや見直しをすることが大切です。薬の変更・減薬が行われたあとは、(患者さんの)体調変化の確認が必須です。

 

医師以外の関係者(薬剤師、介護職員など)にも協力してもらい、「いつ・誰が・どのように体調変化を確認するのか」明らかにしておきましょう。

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