ベンゾジアゼピン系薬の減量・中止

ベンゾジアゼピン系薬(抗不安薬や睡眠薬)は、通常、対症療法として使用されます。さらに、依存性がある薬剤であるため、減量や中止などの「ポリファーマシー対策」が難しいといわれます。

 

ベンゾジアゼピン系薬を服用している患者さんは、「この薬を飲んでいるので今の状態を保てている」と思っています。そのため、薬を中止することに不安を覚えたり、抵抗を示す場合が少なくありません。

 

対策としては、そもそもベンゾジアゼピン系薬をできる限り使わないことが大切です。とはいえ、今使用しているベンゾジアゼピン系薬を減らすのであれば、患者さんの不安や離脱症状を起こさないように注意が必要です。

 

基本的な減量・中止方法
ベンゾジアゼピン系薬の一般的な中止方法は、徐々に減らしていく「漸減方法」です。どれくらいの量をどれくらいの期間で減らしていけば良いのか、はっきりとしたエビデンス(根拠)はありません。信頼できるものとして、英国のThe Maudsley Prescribing Guideline があげられます。

 

The Maudsley Prescribing Guideline では、まず「作用時間の短いベンゾジアゼピン系薬」をジアゼパム(商品名:セルシン)のような作用時間の長いものに置き換えることを推奨しています。

 

作用時間の短いベンゾジアゼピン系薬は、血中濃度の変動が激しく、離脱症状が現れやすいといわれます。そして、その離脱症状により「薬の効果が切れた」と感じ、「次々と薬を飲んでしまう」といった悪循環が発生します。

 

ベンゾジアゼピン系薬を置き換えるにあたって、どれくらいの量で換算が可能なのか以下に示します。

 


出典:総合診療のGノート(10月号)2016

 


出典:総合診療のGノート(10月号)2016

 

ベンゾジアゼピン系薬を他の薬剤に切り替える方法として、ヒドロキシジン※(商品名:アタラックス)を使用した研究データ(RCT)があります。ベンゾジアゼピン系薬を2~4週間ごとに25%ずつ減量し、ヒドロキシジン1回25mg1日1回を代替薬として使用します。この結果、減量開始から6ヶ月後までに、80.4%の患者でベンゾジアゼピン系薬を中止することができました。

 

※ヒドロキシジンは、抗不安作用のある抗ヒスタミン薬です。通常「蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒、神経症における不安・緊張・抑うつ」に使用されます。

 

ベンゾジアゼピン系薬以外へ切り替えるときの注意点
次の薬剤は、抗不安薬や睡眠薬の分類に入りますが、ベンゾジアゼピン系薬とは全く異なる作用機序です。

  • タンドスピロン(商品名:セディール)
  • ラメルテオン(商品名:ロゼレム)
  • スボレキサント(商品名:ベルソムラ)

つまり、同じような(交差的な)作用を示しません。急に薬を切り替えると離脱症状の危険があるので注意が必要です。

関連ページと参考図書

 



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