ポリファーマシーは解消するべきなのか?


ポリファーマシーは解消するべきなのか?

ポリファーマシーは解消するべきなのか?

近年、ポリファーマシー(多剤併用)が社会的問題となっており、あちこちから「たくさん薬を飲むことは悪いこと」といった声が聞こえてきます。患者さんの中には、「長年飲んでいる薬をやめることは不安」と考える方が少なからずいらっしゃいます。

 

もちろん、薬での有害事象が起こっているのであれば、その薬を飲むべきではありません。しかし、そうではない場合、本当に薬をやめるべきなのでしょうか。そして、どの程度であれば薬を飲んでもいいのでしょうか。

 

ポリファーマシーによる「有害事象」と、ポリファーマシー解消による「効果」をみていきましょう。

ポリファーマシーと有害事象

薬の使用数と総死亡

高齢者における研究によると、使用する薬の数が多くなると総死亡が多いようです。その一つに、5剤以上薬を飲んでいる場合、2年後の総死亡が男性1.42倍女性1.3倍になるという研究データ(2011年:65歳以上、12000人を18年間追跡したコホート研究)があります。

 

入院と薬剤関連有害事象(ADE)
①75歳以上の高齢者の緊急入院のうち30.4%が薬剤関連有害事象(ADE)によるものでした。(Chanらの横断研究)
②370人(ランダム抽出)の緊急入院患者のうち、薬剤関連有害事象(ADE)による入院は59人(16.0%)との報告があります。(オーストラリアの後ろ向き研究)
薬剤関連有害事象(ADE)の原因薬剤
③ワルファリン(33.3%)、インスリン(13.9%)、抗血小板薬(13.3%)との報告があります。(米国の緊急外来受診)
④日本では、抗凝固薬+抗血小板薬(24%)、ベンゾジアゼピン系薬(11%)、NSAIDs(11%)との報告があります。(Fushikiらの報告)

 

①出典:Adverse drug events as a cause of hospital admission in the elderly.
②出典:Hospital admissions caused by adverse drug events
③出典:Emergency Hospitalizations for Adverse Drug Events in Older Americans
④出典:Polypharmacy and Adverse Drug Events Leading to Acute Care Hospitalization in Japanese Elderly

 

入院すると、日常生活に適応できなくなる方がいらっしゃいます。不必要な入院を防ぐためにも、ポリファーマシー対策が重要となります。

 

「予防効果が高いが大きなリスクがあるかもしれない薬」よりも、「効いているかわからないが害も少なく漫然と使っている薬」から減薬(ポリファーマシー対策)を行うことが大切です。

 

ベンゾジアゼピン系薬(抗不安薬・睡眠薬など)と有害事象
ベンゾジアゼピン系薬は、認知機能への影響が4.78倍、めまい・ふらつきを2.25倍増加させます。さらに、大腿骨頸部骨折のリスクは1.5倍に増加する(超短時間型ベンゾジアゼピン系薬の服用)など、転倒や交通事故などの危険もあります。

 

抗不安薬・睡眠薬などを服用した人は、服用してない人に比べて総死亡が2.08倍になるといった報告(2014年、大規模な後ろ向きコホート研究)があります。そのうち、服用開始1年以内に限定すると、総死亡は3.32倍になっています。反面、高齢者に睡眠薬を投与しても総死亡は増えないといった報告(2013年、前向きコホート研究)もあります。

ポリファーマシー解消による効果

ポリファーマシーによって、総死亡が増加したり、有害事象が増える可能性があります。だからといって、「すぐに薬を減らすべき」という単路思考に陥ってはいけません。単純に薬の数を減らすだけでは、明確な効果(予後が良くなるなど)があるわけではないのです。

 

ポリファーマシー解消と入院
65歳以上の高齢者に、不適切な処方を減らす介入を行った研究(2014年のシステマティック・レビュー)では、「採用された5研究のうち4研究で入院は少なくなっていなかった」という結果でした。

 

ポリファーマシー解消と総死亡
65歳以上の高齢者(4剤以上の薬を服用)に、不適切な処方を減らす介入を行った研究(2016年、ランダム化比較試験のメタ分析)では、「総死亡は1.02倍とほぼ同程度(18研究、6003人の結果を統合)」という結果でした。さらに、入院を減らすなどの有益な効果もほとんど見られませんでした。

 

これらの結果より、ポリファーマシーを解消しても入院・総死亡を減らすという「有益な効果は期待しにくいこと」がわかります。

 

とはいえ、薬を飲むことは、その副作用を含めそれなりのリスクを伴います。さらに、医療費・国の財政という観点からも、ポリファーマシーを解消する意義はあると思います。

 

ここで伝えたいことは、薬が多いからといって、「必ず減らすべき」ではないということです。薬に関するリスクとベネフィットを、患者さんと医療者で共有しながら、共に歩んでいくことが大切です。

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