薬剤師の役割|高齢者と薬


薬剤師の役割|高齢者と薬

薬剤師の役割と薬物療法

​高齢者は、複数の疾患に罹患していることが多く、それに伴い服薬する薬の数が多くなりがちです。そして、薬による有害事象(adverse drug reactions:ADRs)の頻度が高く、重症例が多いといわれます。

 

65歳以上の高齢者27617人を対象としたコホート研究において、1523件の薬物有害事象のうち421件(27.6%)は予防が可能でした。特に重篤な薬物有害事象は予防可能なものが多く、処方の誤り246件(58.4%)、薬学的管理の不足256件(60.8%)、服薬ノンアドヒアランス89件(21.1%)でした。

 

このように、薬物療法における安全性を高めることは大切です。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015:日本老年医学会」から、特に注意するべき内容をまとめました。

薬剤師の役割(ポリファーマシーへの対応)
①薬による有害事象は、過量投与、過少投与、薬の相互作用、ノンアドヒアランス(服薬をしないなど)が原因であることが多い。薬剤師が、薬の知識の確認、残薬の確認、薬歴管理、相互作用の確認、処方設計などの「薬学的管理」を実施することで、有害事象を未然に回避したり重篤化の回避が可能となる。

 

②薬剤師が、「漫然と繰り返し使用されている薬」を見直すことで、薬剤数の削減、薬物有害事象や医療費の抑制につながる。

 

③薬剤師が、処方の見直しや薬学的管理を実施することで、薬物関連問題(処方の誤り、薬物有害事象、相互作用など)の発生頻度が低下する。

 

④薬剤師が処方を見直し、医師に提言することで、処方の複雑さを軽減できる。(簡単な事例だと、「朝昼夕に飲む薬」を「朝夕に飲む薬」に変更するなど)

 

⑤薬剤師が多剤併用(ポリファーマシー)に介入することで、医療費を削減するとともに薬物有害事象の発現を低下させる。

 

⑥薬剤師による電話カウンセリングが、薬物治療のアドヒアランス(※)を改善し死亡率を低下させる。(薬を渡すだけが薬剤師の仕事ではない。薬を渡した後、患者さんに副作用が起こってないか電話などで確認する薬剤師が増えている。)

 

⑦薬剤師が訪問薬剤管理指導を積極的に行うことは、薬物関連問題の減少、薬物治療のアドヒアランスの向上につながる。(在宅医療など、薬剤師が患者の家を訪問する機会は増加している。)

 

⑧薬剤師が、「患者が入院する際に持参する薬」の鑑別および薬歴聴取(薬に関する聞き取り)を行い処方提案することで、処方の適正化が行える。

 

⑨薬剤師が、患者が退院するときに積極的な情報提供を行うことで、薬物療法のアドヒアランスが維持され、再入院回数の減少につながる。

 

①日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:中
②日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:高
③日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:高
④日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:低
⑤日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:中
⑥日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:高
⑦日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:高
⑧日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:高
⑨日本老年医学会の推奨度:強、エビデンス(根拠)の質:低

 

※アドヒアランスとは、患者自身が病気について理解し、積極的に治療を行う態度をさします。薬のことを理解して飲んでいると、「アドヒアランス良好」といいます。

 

薬物有害事象の種類としては、中枢神経系、電解質異常、消化器症状が7割以上を占めます。その中でも、処方の誤りなど予防可能なものも多いといわれます。

 

さらに、高齢者に見られる薬の問題は、薬物有害事象だけでなく、薬剤選択の誤り、投与量の誤り、相互作用などの薬物関連問題(drug related problems:DRPs)です。DRPsは、医療費の増大や死亡率の上昇などに影響を与えるため、重要な問題となります。

 

高齢者の薬物療法では、患者の個別性を考慮し、認知機能、薬物治療のアドヒアランス、ADL(日常生活動作)、嚥下機能、療養環境などを含めた「総合的な投与計画」が必要です。これらは、薬剤師がその職能を発揮する最適な分野といえます。

 

このように薬剤師が薬物療法に介入することは非常に有益です。ただ残念なのは、上記のエビデンスとなる文献のほとんどが海外のものです。

 

日本の薬剤師(特に薬局の薬剤師)は、臨床研究が得意ではありません。ですので、このようなエビデンスや論文を発表することは多くありませんでした。しかし、近年では多くの学会で論文が発表されるなど、活躍の幅が広がりつつあります。今後の薬剤師に期待です。

 

関連ページ

高齢者と薬

「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の対象  循環器疾患 
なぜ高齢者に薬物有害事象が多いのか 呼吸器疾患
高齢者の服薬管理とその支援 腎不全(CKD)
認知症周辺症状(BPSD) 消化器系疾患
高齢者の不眠症 排尿障害(過活動膀胱)
高齢者のうつ病 薬剤師の役割
認知症の中核症状 ポリファーマシーとは 

 

参考:日本老年医学会
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
(Amazonにリンク)
より詳しい情報知りたい方は、書籍の購入をオススメします。

なぜ、一般の方が医療を学ぶべきなのか?

人生の分岐点で成功する「薬剤師の就職・転職・スキルアップ」はこちら

あなたの人生を美しく「癒しの写真」はこちら







ホーム RSS購読 サイトマップ
HOME 当サイトの目的 薬剤師の転職支援 本の紹介・著書 お問い合わせ

先頭へ戻る