薬局で保険証を確認する理由

薬局で、処方せん(自費を除く)をもとに、お薬をお渡しする際の「保険証確認」に関して、法律を根拠に解説いたします。

 

「本日は、保険証お持ちでしょうか。」
この問いに対して、患者さんの反応は様々です。すぐに見せていただける方、しぶしぶ見せていただく方、中にはお怒りになる方もいらっしゃいます。保険証は大切な個人情報であり、身分証明書として使える場合もあるため、他人に見せるのは嫌だと考えられるかもしれません。

 

しかし、薬局を含む医療機関は、患者さんがお支払いただく金額(自己負担分)以外(7割から9割分)の収入を、健康保険組合(保険者)や支払基金を通じて得ています。これらの収入を得ることができなければ、医療機関にとって大きな痛手となります。医療機関は保険を扱う仕事をしているので、「保険証の提示拒否の患者さんは、自費になっても仕方ない」という意見を、色々なサイトでみかけます。

 

実は、薬局においても保険証の確認の義務があります。

 

保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則
(処方せんの確認)
第三条  保険薬局は、被保険者及び被保険者であつた者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する処方せんが健康保険法 (大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第六十三条第三項 各号に掲げる病院又は診療所において健康保険の診療に従事している医師又は歯科医師(以下「保険医等」という。)が交付した処方せんであること及びその処方せん又は被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確めなければならない。

 

実際、「処方せん」には、保険証の番号が書いてあります。病院やクリニックなどの処方せん発行元では、患者さんから預かった保険証を元に、処方せんに保険番号・記号を入力します。ですので、処方せんにも「保険証の情報」があるならば、いちいち薬局に見せたくないと思われるかもしれません。

 

しかし、実際に以下の事例が起こることがあります。

  • 保険証の記号・番号が違っている(病院・診療所の入力間違い)
  • いつのまにか保険証が期限切れになっている
  • いつのまにか負担割合が変わっている

 

これらの事例が起こった場合、健康保険組合(保険者)や支払基金に保険請求しても、受理してもらえません。つまり、いただくべき金額が薬局に入ってきませんので、その分を患者さんに請求することにもなりかねません。このような事態にならないために、薬局でも保険証の確認が求められています。

 

患者さんに対して「保険証提示が義務である」根拠が、以下の法律です。

 

健康保険法施行規則
第五十四条  法第六十三条第三項 各号に掲げる薬局(以下「保険薬局等」という。)から薬剤の支給を受けようとする者は、保険医療機関等において、診療に従事する保険医又は医師若しくは歯科医師が交付した処方せんを当該保険薬局等に提出しなければならない。ただし、当該保険薬局等から被保険者証の提出を求められたときは、当該処方せん及び被保険者証を(被保険者が法第七十四条第一項第二号 又は第三号 の規定の適用を受けるときは、高齢受給者証を添えて)提出しなければならない

 

つまり、保険証は、薬局も確認する義務があり、患者さんも見せる義務があるといっても過言ではないのです。これらの情報は、金銭トラブルなどの不利益を回避できる得する情報です。



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