薬の間違いに関する法律


薬の間違いに関する法律

薬の間違いに関する法律

薬局で薬を受取った際に、「もらうはずだった薬と違う薬を受取った」経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。このようなミスをしないために、多くの薬剤師は日々研修などを重ね、意識をしています。しかし、本来あってはなりませんが、間違いをおこしてしまうことは実際にあります。

 

さて、このページでは、薬の間違いに関する法律と、その責任に関して薬局の薬剤師の義務とともに解説いたします。薬剤師以外のみなさまにとっては、医療や薬に関する事故やその責任、薬剤師の存在の意味(の一部)を学んでいただけます。薬剤師にとっては、ミスを起こしてしまった際に、適切に対応する(不要な譲歩をしない)ための知識を身につけることができます。

 

薬の間違いによって健康被害がおこった場合に、問われる法的責任は以下の3つです。(なぜ、薬の渡し間違いと書かないかは後ほどご説明いたします)

 

*刑事責任
*行政責任
*民事責任

 

 

薬局・薬剤師に関する法律はたくさんありますが、その中でも「薬の間違い」に関する代表的な法律がこちらです。

 

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 略称:医薬品医療機器等法
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則
薬剤師法

 

上記、医薬品医療機器等法の旧名称は「薬事法」ですが、私にとってこちらの名称の方がなじみがあります。以下の内容は、医薬品医療機器等法の一部と、弁護士から聴いた話をもとに作成しました。

刑事責任

国家から処罰を受けることです。

 

業務上過失致傷罪(刑法211条1項)があげられますが、この罪では5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金が科されます。

例 ウブレチド事件(さいたま地方裁判所判決、平成24年6月15日)
胃酸中和剤(マグミット錠250mg)と間違えて、「医師の指示とは異なるウブレチド錠(毒薬区分)」を約20人へ「計約2700錠誤投薬した事件」です。
約30日後にミスに気づきましたが、75歳の女性を死亡させてしまっています。ミス自体も大きなミスですが、発覚したにも関わらず対応をせず、放置してしまったという「職業意識の低さ」が事件を大きくしてしまった最大の原因とされています。事件をおこした薬剤師は、刑事処分として、禁固1年、執行猶予3年の刑に処されました。

 

刑事責任は、「国との関係」の責任です。患者さんが国へ訴えて「刑事責任」を問われる場合はありますが、主な目的が犯罪の予防のため、患者さんと直接の関係する責任ではありません。上記ウブレチド事件では、「放置してしまったこと」、「報道などの社会的影響」、「被害の重大性だったこと」、これらの理由により刑事責任を問われることとなりました。

 

「薬を間違って渡すこと(調剤過誤)の全て」に対して、刑事責任を問われるというわけではありません。一般的には、被害の大きさや悪質さを総合的に判断され責任が問われます。

行政責任

地位(薬剤師免許)に関係する責任(処分)です。
罰金以上の刑に処された場合には、免許取消・業務停止などの処分を受ける場合があります。

 

一般的に、刑事責任を問われるような「重大な問題」でない場合には、責任を問われないことが多いようです。しかし、上記ウブレチド事件では、刑事処分の後に業務停止1年の行政処分を受けています。

 

厚生労働大臣が、以下の3つの処分を行うことができます。
・戒告(倫理・知識・技能に関する研修による再教育など)
・3年以内の業務停止(薬剤師法8条、5条)
・ 薬剤師免許の取り消し(薬剤師法8条、5条)

 

民事責任

この責任が、みなさまにとって一番関わりがあります。被害者に対して、損害の填補(金銭の支払い義務)をしなければならない責任です。(法的な解決方法は、最終的には金銭での解決しかないためです)

 

被害を被った場合、「過失」、「因果関係」、「損害」の要件3つが全て揃えば、損害請求権が発生します。

 

過失とは、うっかりのミスではなく、「予見可能性があったにもかかわらず、結果回避義務を行ったこと」とされます。例えば、薬剤師には処方箋どおりに調剤する義務がありますが、「薬の渡し間違い」をしてしまった場合、義務を怠った(義務違反:過失があった)ことになります。

 

薬剤師には、疑義照会、処方箋にもとづく正しい調剤、正しい服薬指導など、多くの義務があります。基本的に、義務違反があると法的責任を負わなければなりません。

 

最高裁の有名な判決(最高裁昭和36年2月16日判決)「東大輸血梅毒事件」
医師の注意義務の程度について判断された先駆的な最高裁の判例とされています。この判決では、「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのは、已むを得ないところといわざるを得ない。」と判示し、医師の一般的注意義務の程度を判断したものと理解されています。

 

この判決は、医療事故の裁判の基準として考えられております。つまり、医師のみでなく、薬剤師などの医療従事者も「最善の注意義務」という非常に高度な義務を求められています。つまり、医療従事者は、できるうる最高の注意(パフォーマンス)を「すべての患者さんに対して」行うよう意識しなければなりません。

 

昨今、医療は「医師がトップ」ではなく、「各専門家がそれぞれの特性を活かすこと」が求められています。つまり、医師がトップなので言うことを聞いておけば責任を免れるというわけではありません。薬剤師は与えられた義務を果たすことができなければ、その責任を問われる可能性があります。

調剤業務における薬剤師の義務

①必要な薬学的知見に基づく指導(薬剤師法第25条の2等)
②患者さんからの情報の確認
③薬剤の適正使用確保ができない場合の(薬剤の)販売又は授与の禁止
④投薬前後の相談応需

 

①薬剤師は、処方箋に基づく調剤や、要指導医薬品を販売する際、対面での(五感を用いた)情報提供、及び薬学的知見に基づく指導を行わなければなりません。情報を一方的に発信するのではなく、患者さんから情報を聞き取り、それに基づく個別具体的な指導を行うなどです。(もちろん、薬剤師は必要な知識を持っておかなければなりません)

 

②「患者さんからの情報の確認」は、以下10項目が厚生労働省令で定められています。

  1. 年齢
  2. 他の薬剤又は医薬品の使用の状況
  3. 性別
  4. 症状
  5. 現にかかっている他の疾病がある場合は、その病名
  6. 妊娠しているか否かの別及び妊娠中である場合は妊娠週数
  7. 授乳しているか否かの別
  8. 当該薬剤に係る購入、譲受け又は使用の経験の有無
  9. 調剤された薬剤又は医薬品の副作用その他の事由によると疑われる疾病にかかったことがあるか否かの別並びにかかったことがある場合はその症状、その時期、当該薬剤又は医薬品の名称、有効成分、服用した量及び服用の状況
  10. その他法第九条の三第一項の規定による情報の提供及び指導を行うために確認が必要な事項

 

つまり、医薬品を調剤するときには、年齢や症状を確認しなければなりません。ここで重要な部分は、「症状の確認」の義務があることです。薬を受け取る際に、「薬剤師がいちいち質問してくる。早くして欲しいのに・・・」という声を聞くことがありますが、このように定められておりとても大切なことだとご理解いただければ幸いです。

 

薬剤の適正使用確保ができない場合の(薬剤の)販売又は授与の禁止
以前は、「適正使用が確保できない場合、薬を渡さないことができる」とされていましたが、義務となりました。つまり、薬剤師は、患者さんが「薬を安全に使用できるかどうか」をしっかりと見極めなければなりません。

 

投薬前後の相談応需
薬を渡す前と後に、薬に関する指導を行う義務です。つまり、薬剤師は、薬の副作用の確認、有効性の確認は薬剤師が行うべきと、国から期待されています。今後は、経過観察義務と考えれるようになるであろうと言われています。

 

これらの義務を怠った場合、「薬に関する間違いをした」ことになります。つまり、薬剤師は、薬の渡し間違いをしないことはもちろん、指導などの義務を果たさなければなりません。

 

 

【あってはならないことですが・・】

患者さんが民事責任を問うことができる相手は、「ミスをした薬剤師」、「その店舗を管理している薬剤師」「薬局を運営している者」全員に対して金銭請求をすることができます。
・ミスをした薬剤師(民法709条 不法行為責任)
・管理している薬剤師(民法715条 使用者責任)
・薬局を運営している者(民法715条 使用者責任、民法415条 契約責任)

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