虚血と細動

心臓に血液が届かない虚血状態の場合、細胞にどのような変化が起こるでしょうか。心筋梗塞や不安定狭心症では心臓が虚血状態になり、に関わる不整脈を起こします。虚血状態では、心臓の電気刺激に乱れが生じています。

虚血時の細胞内外の変化

変化する点 どのように? 備考
細胞外 Kイオン濃度が増加する 細胞内のKイオンが障害心筋から流れ出る
細胞内 Caイオン濃度が増加する 虚血により、細胞外からCaイオンの流入が起こる。同時に細胞内からCaイオンをくみ出す機構に障害が起こり、Caが細胞外に出にくくなる。
交感神経 亢進する 虚血により交感神経の亢進が起こる。さらに、虚血部位においてカテコラミンの取り込みが低下する。
内向き整流型Kチャネル群 細胞内のATP不足で、ATP感受性Kチャネルが開く  
電位依存性Kチャネル Kイオンの平衡電位の変化 細胞外のKイオンが増加すると電位差が小さくなる。そして、流れる電流量も少なくなる。
Naチャネル Na電流も減少する  
ギャップジャンクション 閉鎖する方向に働き、細胞間の接合が弱くなる  

 

このように、虚血によって様々な変化が起こります。静止膜電位は浅くなり、活動電位の立ち上がりは緩やかになります。また、活動電位の持続時間も短縮します。つまり、心臓は正常に動くことができなくなります。どのように動くのか、簡単に想像できない状態です。

細動とは、いったい何?

心房細動や心室細動は、よく耳にします。この「細動」は、リエントリーが原因である場合が多いといわれています。どのように興奮(電気刺激)の伝導がなされているか、二つの説があります。

 

① 多数の電気刺激が心筋内を、でたらめに旋回する。
多数の電気刺激が、お互いに無関係に、興奮できる領域を求めて伝わります。四方八方に散らばっていくようなイメージです。

 

② 電気刺激が渦巻きのように回転しながら分裂し、衝突を繰り返している。
①とは異なり、電気刺激同士が、衝突しつづけるという説もあるようです。

 

これらの異常興奮に対して、薬で活動電位持続時間をいくら延長しても、細動が治まることは極めて稀である。逆に、伝導を薬で抑制する方が、細動を停止しやすいといわれます。

 

最近では、細動の一部は「リエントリーが原因ではない」という説もあります。「細動」という言葉はよく使われてきましたが、その本体は今でも解明されていません。

不整脈の治療

カテーテルアブレーションの適応
WPW症候群、発作性上室頻拍、心房粗動、心房頻拍、このような上室性頻拍症は95%以上の例で根治が可能です。心房細動でも70%近くが有効との報告があります。

 

植え込み型除細動器の役割
1980年、アメリカで使用されるようになりました。心臓の突然死は80~90%が心室頻脈・心室細動です。この除細動器によって突然死は数%に減少しました。

 

薬やカテーテルアブレーションで効果がない状態で、基礎疾患があり血液の流れが破綻している場合に適応されます。現在は、ペースメーカーとあまり変わらない大きさであり、経静脈リード(簡単な手術)でつけることができます。

 

心室細動が起こると除細動が作動し、細動を停止させます。徐脈になると徐脈用ペースメーカーとして作動します。アメリカでは、予防的に除細動器をつける場合が多いようです。

 

 

続いて、不整脈の治療・専門家の話

 

 

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