市民のための添付文書の読み方(基礎知識)

添付文書(医療用医薬品添付文書情報)は、医薬品の効能や副作用などの情報が書かれた文書です。インターネットの普及で、医療関係者以外も簡単に見ることができるような時代になっています。

 

自分自身が飲む薬の情報を詳しく知っておきたいと思われることは、良いことのように思えます。しかし、誤った情報は健康被害などを引き起こし、損をしてしまうかもしれません。そこで、添付文書を味方にするための「見方(読み方)」をわかりやすく解説いたします。

 

添付文書とは、医薬品情報を医師・歯科医師・薬剤師に対して提供するために、製薬会社が作成することを義務付けられている公的文書です。

 

医薬品情報は、患者さんを健康被害から守るなど、医薬品を適正に使用するためのものです。よって、医薬品医療機器等法(旧薬事法)において、添付文書に記載すべき事項や留意点、禁止事項が規定されています。規定を守れなかったり、虚偽や誤解を招くような記載には罰則が定められています。

 

医師・歯科医師・薬剤師に対して、添付文書は作られていると書きましたが、添付文書は誰のために書かれた文書だと思いますか?一番薬を扱っているのは薬剤師ですが、実は、添付文書は医師に向けて書かれた文書なのです。

 

ですので、薬剤師と医師では添付文書の見方が異なります。大雑把にいうと、医師は上から、薬剤師は下から見ていきます。詳細は、市民のための添付文書の見方(項目別解説)で解説いたします。

 

このように、医療者でも見方が異なる「添付文書」ですが、市民(医療関係者以外の方)が見る際には、注意が必要ですので、注意点を以下にまとめます。

 

①多くの患者さんは副作用の項目を気にしすぎる傾向にある。
②添付文書には、「薬物動態」「禁忌」「劇薬」など専門用語が多い。
③効能・効果の項目には、書かれていない効能・効果がある。

①多くの患者さんは副作用の項目を気にしすぎる傾向にある。

副作用の項目には、いかにも危険な薬であるような記述が多く存在します。中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)は、漢字を見るだけで恐ろしそうな印象を受けます。また、肝機能障害、白血球減少、頭痛、嘔吐など多いものでは数十個の副作用の記載がある医薬品もあります。これらのすべてが起こるわけではなく、医師は発現時期や症状を見極め「本当に医薬品による副作用か」診断します。

 

例えば、「発疹」と副作用のところに書いており、腕に3個くらい湿疹ができた場合、どのように考えますか?副作用の湿疹と考え、勝手に薬を中止してしまう方が、実際にいらっしゃいます。もちろん、薬が原因の湿疹(薬疹)の初期だったのかもしれません。しかし、全身への広がり具合や薬を飲み始めてどれくらい時間が経ってからのことなのか、他に鼻水などのアレルギー症状が出ていないか等を、総合的に判断しなければ「薬疹」と診断することはできないのです。勝手に薬を中止することは、くすりの離脱症状など「不必要な健康被害」をおこしてしまう場合もあるため、非常に注意が必要です。

②添付文書には、「薬物動態」「禁忌」「劇薬」など専門用語が多い。

専門用語が多いと書きましたが、ほぼ専門用語で書かれているという方が正しいかもしれません。これは、もともと添付文書が専門知識を有する人向けに書かれているためです。もちろん、患者さんにも知る権利はあるため、絶対に見ないでくださいとは言いません。しかし、専門用語が多いことによって、内容を中途半端に理解することは、非常に危険ですのでオススメできません。
こちらのサイト(くすりのしおり)であれば、専門用語が少なくわかりやすい情報を得ることができるはずです。

③効能・効果の項目には、書かれていない効能・効果がある。

例えば、ロキソニン錠には、消炎、鎮痛、解熱の効能・効果があると書かれています。しかし、ロキソニン錠は、夜にトイレの回数が多くて困る方(夜間頻尿)の治療に使用する場合もあるのです。これは、ロキソニン錠が、「腎臓で尿を作る過程を抑えること」や「尿を出したいという感覚(排尿反射)の低下の作用」があるためだと考えられています。しかし、保険適応の関係で、添付文書の効能・効果への記載はありません。医師が、本来飲んでもらいたい「目的」と添付文書に書かれている「効能・効果」が異なる場合があり、安易な判断はオススメできません。

 

以上のように、添付文書を見ることは、注意をしなければをしてしまいます。それでも、薬の情報が詰まった「添付文書」をみたいという方は、こちら「市民のための添付文書の見方(項目別解説)」を読んでからご覧ください。



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