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2型糖尿病治療の最新情報(糖のながれ)

2型糖尿病治療最新情報について、河盛隆造先生の講演「2型糖尿病治療の目指すところは」を参考にまとめを行います。

 

河盛隆造先生は、順天堂大学特任教授であり、糖尿病に関して日本トップレベルの医師です。

 

 

【スポートロジー】
河盛先生は、順天堂大学スポートロジーセンターのセンター長でもあります。

 

スポートロジーとはスポーツ医学ではなく、スポーツを科学的にしたいという思いでつくられた造語です。

 

生活習慣病、高齢者の転倒や骨折予防、認知症、うつ病を、運動によって改善させる「科学的根拠にもとづく学問」です。

 

 

スポートロジーセンターにはさまざまな機械がそろっています。

 

24時間の間に、分刻みのエネルギー消費量、脳の微細な変化、ブドウ糖の消費量、身体の組成(脂肪・筋肉量・骨量など)、睡眠の状態(ポリソムノグラフィー)など、大げさにいえば身体のすべてを解明することができます。

 

 

近年、「過栄養」と「運動不足」という問題が深刻化し、生活習慣病は急激に増加しています。

 

肥満症も増加していますが、その全てを「食べ過ぎ(過食)」のせいにしている現状があります。

 

本当に過食のせいで生活習慣病が悪化しているのでしょうか。「少しの運動では、エネルギー消費をしない体」になっているのかもしれません。

 

 

【糖尿病と国民の理解】
インスリンは、血液中に流れているブドウ糖(血糖)を、筋肉などの全身の細胞へ取り込ませるホルモンです。

 

インスリンは、人のからだの中に存在しますが、薬(医薬品)としても用いられています。

 

そのインスリンが発見されてから約100年も経過したにも関わらず、現在(2015年)インスリンよりも良い薬は開発されていません。

 

 

1型糖尿病(膵臓のβ細胞の破壊による)は、iPS細胞で膵β細胞を作成することで完治できる時代がやってきます。

 

今後の問題は、世界中で増え続けている「2型糖尿病」なのです。

 

2014年時点で、糖尿病有病者数は3億8,670万人(有病率 8.3%)に上ります。

 

有効な対策を施さないと、2035年までに5億9,190万人に増加すると予測されています。

 

 

2型糖尿病の治療では、患者の「糖のながれ」を的確に把握し、適切な手段により健康な人に近い状態に戻すことが求められます。

 

そのためには、国民が糖尿病をしっかりと理解することも非常に大切なのです。

 

 

【糖尿病は「糖のながれ」の異常】
糖尿病は、血糖値が高い病気であり、血管内にブドウ糖が多い病気です。

 

その通りですが、現在「ブドウ糖が大変な悪者」にされています。

 

そして、炭水化物(分解されて主にブドウ糖になる)を食べなければいいという意見も最近よく耳にします。

 

 

しかし、全身の細胞は、活動のためにブドウ糖を必要としています。

 

私たちの脳は、今この時間もブドウ糖を使っています。

 

ブドウ糖自体が悪いのではありません。

 

このブドウ糖が正常に利用されず、血管内にブドウ糖が余ってしまっているのです。

 

からだの中のブドウ糖は、放出されたり利用されたり、常に変化します。

 

その「糖のながれ」が、「血糖値」なのです。

 

 

脳は、美味しい食事を見るだけで、インスリン(血糖を下げるホルモン)を分泌させたり、グルカゴン(血糖を上げるホルモン)の分泌を止めたりします。

 

また、食事が腸の中に入ってくると、腸管からインクレチンが分泌されます。

 

インクレチンは、インスリンの分泌を刺激したり、グルカゴンの分泌を抑制するホルモンです。

 

 

インスリン、グルカゴン、インクレチンという3種類のホルモンが、「血糖値を上げたり下げたりすること」に関与しています。

 

ホルモン 主な作用
インスリン

全身の細胞に血糖を取り込ませるホルモン

 

筋肉:糖の取り込み促進、グリコーゲンの合成促進、アミノ酸の取り込み促進、たんぱく質の合成促進、たんぱく質の分解抑制、ケトン体の利用促進、カリウムイオンの取り込み促進

 

脂肪組織:糖の取り込み促進、脂肪酸合成の促進、リポたんぱくリパーゼの活性化、脂肪分解の抑制

 

肝臓:グリコーゲンの合成促進、解糖の促進、糖新生の抑制、脂肪の合成促進、たんぱく質の合成促進、ケトン体生成の抑制

グルカゴン

肝臓・筋肉において、グリコーゲン分解の促進、グリコーゲン合成の抑制をするホルモン

 

体内では、余分な血糖は肝臓で取り込まれてグリコーゲンという物質に変換されて蓄えられます。

 

そして、体内で血糖が必要になったら、グリコーゲンを分解して血糖に戻します。

インクレチン 膵臓β細胞からのインスリン分泌を増加させたり、膵臓α細胞からのグルカゴン分泌を抑制したりします。

 

食後に高くなった「血糖値」をコントロールします。

 

炭水化物は、ゆっくりとブドウ糖になります。

 

そして、ブドウ糖は、インスリンの分泌を刺激し、グルカゴンの分泌を止めます。(アミノ酸は、インスリンとグルカゴンともに分泌を刺激します。)

 

 

「糖のながれ」の中で、ブドウ糖、アミノ酸、インスリン、グルカゴンは全て肝臓に取り込まれ、肝臓はインスリンの力で猛烈にブドウ糖を取り込みます。

 

つまり、肝臓よりうしろの組織(脳・筋肉・脂肪細胞)での、血糖値はほとんど上がりません。

 

ブドウ糖は、インスリンの力で、脳、筋肉、脂肪細胞に取り込まれ、速やかに利用されます。

 

また、腎臓はブドウ糖を逃さないように必死で汲み上げています。

 

正常血糖応答の例
①摂取された糖質は、ブドウ糖に分解されて消化管から体内に吸収される。

 

②膵β細胞よりインスリンが分泌され、膵α細胞からのグルカゴン分泌は抑制される。

 

③ブドウ糖・インスリン・グルカゴンが肝臓に流入する。

 

④肝臓がブドウ糖を取り込む。

 

⑤肝臓を通り抜けたブドウ糖は、インスリンの働きで筋肉に取り込まれ、血糖値が下がる。

 

 

 

つづきは、2型糖尿病治療の最新情報(糖とインスリン)です。

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