国民の健康管理(予防医学等)への関わり
(1)特定健康診査・特定保健指導への関わり
生活習慣病の予防や、発症リスクの程度に応じて生活習慣を見直すサポートを行うものです。
薬剤師が担当できる範囲は、特定保健指導における食生活改善指導と運動指導です。(研修が必要)
(2)市中感染症モニターへの関与
インフルエンザの流行等の速やかな情報収集が行われています。
(3)ワクチンの管理と接種
(保管条件が厳重であり使用期限も短い)ワクチンの確保及び出庫、接種スケジュール調整、接種後の副作用発現のモニター及び報告等が行われています。
(4)市民教育への関わり
地域で開催される健康や保健に関する催しに参加し、お薬手帳の携行と利用の方法、医薬品の正しい管理方法、医薬品や健康食品の適正使用等について啓発活動を行い、食事・運動相談や禁煙相談等の健康相談を行っています。
(5)災害時の対応
災害時の病院薬剤師の役割には、自院で果たすべき役割と被災地等に赴き医療チームの一員として医療支援を行う場合があります。
外来患者への関わり
(1)薬剤師外来
①持参薬、お薬手帳、薬歴の確認
②患者状態の観察と臨床情報の収集
③処方提案
④ニコチン依存症管理(禁煙指導)
(2)救急医療・中毒への対応
中毒薬物の同定と血中濃度測定、解毒剤の確認、医薬品の準備・調製等の他、集中治療室入室後の薬剤管理指導のための薬歴管理を行います。
(3)臨床研究(治験を含む)
医療薬学を構築する研究の一領域であり、日常医療チームの中で、創薬・育薬支援、医薬品の適正使用、個別化医療へのアプローチにおける役割・責務を果たし、臨床現場において実施されるヒトを対象とした研究を意味します。
(4)地域ネットワークの構築と患者参加型医療の土壌推進
地域完結型の医療・介護サービスを円滑かつ安全に提供するには、医療・介護・行政間で患者情報の共有が必要です。
入院患者への関わり
(1)一般病棟での役割
①カンファレンス・回診への参加
②持参薬、お薬手帳、薬歴の確認
③患者状態の観察と臨床情報の収集による処方提案
④薬薬連携(地域連携)と情報の共有化
薬薬連携とは、病院薬剤師と薬局薬剤師との間で一人の患者についての情報等を共有することをさします。入院患者の退院時の情報等を病院薬剤師が情報ツール(退院時服薬指導書や退院時薬剤サマリー、施設間情報連絡書等)を用いて患者に説明し、その情報を患者を介してかかりつけ薬局へ提供することが行われています。
(2)集中治療室における役割
①医薬品管理
②カンファレンスへの参加
③薬歴把握と薬剤管理指導
④調剤
⑤栄養管理
⑥感染対策
(3)手術室における役割
①医薬品管理
②手術時使用薬剤の調製
③回診・カンファレンスの参加と薬剤管理指導
④手術室運営の改善
(4)臨床研究(治験を含む)
退院時の関わり
医薬分業の進展に伴い薬局薬剤師は外来の薬物治療、病院の薬剤師は入院患者の薬物治療に当たるという考えが定着しつつあります。その中で患者情報の共有化が薬局と病院の間で、医療の継続性・一貫性を保つための医療体制の構築と共に整備されつつあります。その具体的な試みが以下の2点です。
(1)地域連携パスの活用
「地域連携パス」とは、切れ目のないサービスを提供するために、様々な医療の専門家が協働し、疾病の回復過程に沿った一連のサービスを体系化したパスのことをさします。現在地域連携パスは、大腿骨頚部骨折、脳卒中及び各種のがん患者の治療等で用いられています。
(2)退院時共同指導と情報の共有化
退院時の共同指導は、医療安全を目指した薬局・病院薬剤師のシームレスな情報の伝達と共有化を目的として、平成20年度(2008年度)の診療報酬改定で新設されました。
医療・介護連携に貢献する取り組み
(1)介護老人保健施設への関わり
①医薬品管理
②入所判定会議への参加
③調剤
④薬剤管理と服薬指導・支援
⑤感染対策
⑥栄養管理・褥瘡管理
(2)介護老人福祉施設への関わり
①医薬品管理
②感染対策
③NST・褥瘡管理
(3)訪問看護・介護事業者との連携
薬局との連携
(1)情報の共有
①お薬手帳の記入を徹底
②病院薬剤師は調剤情報提供書(服薬指導サマリー)を作成・提供
③退院時カンファレンスへの出席を薬局に要請し、退院後の療養についての情報を共有
④入院にあたっては、訪問薬剤管理指導記録の要約や調剤記録のサマリーの提供を求める
⑤訪問薬剤管理指導を行っている患者が入院した場合は、指導記録のサマリーの提供を求める
(2)患者への指導・啓発
①定期的に診療を受けている患者には、薬歴手帳を常時携帯し入院時には医療機関に提出するよう指導する
②退院後初回の処方箋交付時に、薬剤情報提供書をかかりつけ薬局に提示するよう指導する
医療の質の向上のための取り組み
医療は、患者満足の最大化が最優先目標となります。医療の質は、核となる診療の質と看護の質及び組織の運営管理力やホスピタリティ等の支持体制の質の総和と考えられます。診療や看護の質を確保するためには、患者の権利と責任に基づく患者自身の医療への参加、安全・安心な医療提供体制の確立、医療者間の患者情報の共有が必要です。
(1)医療関連感染対策への関わり
抗菌薬や消毒薬の適正使用の促進に留まらず、各種手順や対策の整備と見直し、院内分離菌や抗菌薬感受性の把握、主要な感染症の発生状況の把握、施設特性を考慮したサーベイランスの実施、院外の情報収集・発信、職員教育等への積極的な介入が望まれています。
(2)多職種連携
薬剤師は入院中に提供された薬学的サービスの内容と留意すべき事項を退院後のケアスタッフに過不足なく伝えることが求められています。
(3)医薬品安全管理
(4)その他
①薬剤管理指導患者の再入院率
②疑義照会後の処方変更率
③プレアボイド報告数
④副作用報告数等