卸勤務薬剤師
【医薬品卸業のはじまり】
医薬品卸業について、医薬品卸が「ひとつの業態」として明確に誕生したことはほとんどありません。医薬品の輸入業者、製薬業者、薬局や薬店等の形態の中で、卸業機能を合わせもっていたと考えられています。
このような経緯から輸入業、製造業、販売業という分類の概念が出てきました。一昔前、卸業という業態は、販売業のひとつの形態としての認識しかありませんでした。そしてその当時、旧薬事法では、卸売業が一般販売業に包括されていました。
【医薬品卸業の歴史】
年度 | 内容 |
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昭和35年 | 薬剤師をおきながら調剤を行わず、全ての医薬品を販売できる業態を一般販売業として位置付け、さらに供給管理における品質要件を確保するため、試験室の設置を義務付けた。 |
昭和38年 | 薬事法の一部が改正され、第25条で、販売先を薬局開設者、医薬品販売業者、医薬品の製造業者、輸入業者、病院、診療所、家畜診療施設の開設者に限定した医薬品卸売業の概念が取り入れられることになった。 |
昭和54年 | 情報提供の条文の中で卸売一般販売業者は、医薬品の供給の上で独自の役割を担うとともに、その業態から見て、情報の収集又は提供がしやすい立場にあることから、情報提供の責務を課せられるなど、薬事法上の一般販売業から「卸売一般販売業」が分離独立した業態としてとらえられた。 |
平成21年 | 「卸売販売業」が、ひとつの業態として明確に規定され、その機能として「卸売販売業における医薬品の適正管理の確保」が記載された。さらに、薬事法施行規則では法で定められた販売先以外に医薬品を供給する場合の許可要件が統一された。 |
【医薬品卸の機能】
物的流通機能、金融機能、販売機能、情報機能、災害・パンデミック時対応機能など、医薬品卸にはさまざまな機能があります。情報機能では、医薬品卸業者に対して、医薬品の有効性、安全性の確保と適正使用のため情報収集および提供に努めるよう義務づけられています。(医薬品医療機器等法の第68条の2)
【卸勤務薬剤師の役割】
病院・薬局等の医療施設のように、患者さんと直接関わる機会は多くありません。業務は組織内部で行われることが多く、とりわけ姿の見えない状況になりやすいといわれます。しかし、卸勤務薬剤師はさまざまな重要な役割を担っています。
まず、医薬品の流通過程における品質管理に必要とされます。品質を損なうことのないよう、日本医薬品卸業連合会が独自に定めた自主規範である「医薬品の供給と品質管理に関する実践規範」(Japanese Good Supplying Practice:JGSP)に沿った管理が行われています。その中でも、取り扱いが厳しく規制される向精神薬や麻薬は、薬剤師が責任をもって管理します。
医薬品は、生命関連商品です。そして、効果だけでなく副作用にも注意が必要であるため、医薬品情報はとても重要です。より正確で、幅広い情報を、薬局や病院に提供するためにも、卸勤務薬剤師は活躍しています。
また災害時の対応、地域薬剤師の研修や適正使用を図るための活動も行っています。
例えば、災害時必要と想定される医薬品リストの作成、県との協定による医薬品の備蓄確保があげられます。これらの活動は、地域医療への貢献として必要な業務なのです。