チーム医療の推進

 医師不足などの問題を機に、医療専門職種によるチーム医療の促進が、厚生労働省の「チーム医療の促進に関する検討会」で審議が続けられ、平成22年3月に報告書をまとめました。

 

チーム医療における薬剤師の役割
(「チーム医療の推進に関する検討会報告書」より)

 

 同検討会では、薬剤師の役割について、次のように、提言をまとめている。
 医療技術の進展とともに薬物療法が高度化しており、チーム医療において、薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが、医療安全の確保の観点から非常に有益である。

 

 また、近年は後発医薬品の種類が増加するなど、薬剤の幅広い知識が必要とされているが、病棟において薬剤師が十分に活用されておらず、医師や看護師が注射剤の調製(ミキシング)、副作用のチェックその他薬剤の管理業務を担っている場面も少なくない。

 

 さらに、在宅医療を始めとする地域医療においても、薬剤師が十分に活用されておらず、看護師等が居宅患者を担っている場面も少なくない。

 

 一方で、日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師」、日本病院薬剤師会が認定する「専門薬剤師」「認定薬剤師」等、高度な知識・技能を有する薬剤師が増加している。

 

 こうした状況を踏まえ、現行制度の下、薬剤師が実施できるにもかかわらず、薬剤師が十分に活用されていない業務を改めて明確化し、薬剤師の活用を促すべきである。

 

【業務例】
・医師・薬剤師等で事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、医師・看護師と共働して薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間の変更や検査のオーダを実施
・薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間について積極的な処方の提案
・薬物療法を受けている患者(在宅患者を含む。)に対する薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)
・薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況や有効性の確認を行うとともに、薬剤の変更等を医師に提案
・薬物療法の経過等を確認した上で、前回処方と同一内容の処方を医師に提案
・外来化学療法を受けている患者に対するインフォームドコンセントへの参画及び薬学的管理
・入院患者の持参薬の確認・管理(服薬計画の医師への提案等)
・定期的に副作用の発現の確認等を行うため、処方内容を分割して調剤
・抗がん剤等の適切な無菌調製

 

 また、医療スタッフそれぞれの専門性を活かして薬剤の選択や使用に関する業務を行う場合も、医療安全の確保に万全を期す観点から、薬剤師の助言を必要とする場面が想定される。このような場面において、薬剤の専門家として各医療スタッフからの相談に応じることができるような体制を整えることも重要である。

 

 今後は、平成24年度から新制度(薬学教育6年制)下で教育を受けた薬剤師が輩出されることを念頭に、医療現場(医師・薬剤師・患者等)におけるニーズも踏まえながら、例えば
・薬剤師の責任下における剤形の選択や薬剤の一包化等の実施
・繰り返し使用可能な処方せん(いわゆるリフィル処方せん)の導入
・薬物療法への主体的な参加(薬物の血中濃度測定のための採血、検査オーダ等の実施)
・一定の条件の下、処方せんに記載された指示内容を変更した調剤、投薬及び服薬指導の実施等、さらなる業務範囲・役割の拡大について、検討することが望まれる。
(平成22年3月)

 

▶特定行為を行う看護師研修制度がスタート
 厚生労働省のチーム医療の推進検討会が、平成22年3月に報告書を公表した後、「特定看護師」の養成に向けての検討が継続され、平成26年6月に成立した医療介護総合確保推進法の一部として改正された保健師助産師看護師法により、特定行為に係る看護師の研修制度が創設され、平成27年10月から施行されることになりました。

 

 「特定看護師」という新たな資格が法律で定められたわけではないですが、一定の研修を受けた看護師は、医師等が看護師に診療の補助を行わせるため、あらかじめ手順書を定め、その手順書に従って特定行為を行うことができるというものです。

 

 特定行為とは、看護師が行う、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が、特に必要なものとして通知により定められた38の行為です。特定行為には、インシュリンの投与量の調製、持続点滴中の降圧剤の投与量の調製、抗けいれん剤の臨時の投与等、薬剤の投与に関する行為が含まれていることに留意すべきです。但し、すべての特定行為は、医師の指示の下、手順書により行うことが明記されています。



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