病院に行くべき?下痢の病態とその対応

下痢とは、糞便中の水分量が多くなり、固形のかたちでない糞便をさします。一般的に、下痢が起こると排便の回数も増加します。医学的には、便中に排泄される水分量が1日200mL(200g)を超える場合と定義されています。

 

糞便中の水分量が増えるメカニズムは、飲食物が腸管を通るときに水分が吸収されない場合と、腸管から分泌される水分量が増える場合が考えられます。2週間以上の慢性的に続く下痢の場合は、クローン病などの大きな病気が隠れている可能性があるため病院を受診しましょう。

 

 

【ウイルスと細菌による下痢】
吐き気や嘔吐を伴う下痢の多くは、ウイルスもしくは細菌の感染が原因だといわれます。

 

ウイルスの感染による場合は、主に小腸の粘膜に障害を起こします。そして、小腸で水分が吸収がされにくくなり、下痢がおこります。ウイルスによる感染は、軽度の炎症であることが多く、高い熱や血便が出ることは少ないと言われます。基本的に、薬などを使わなくても自然と治ります。

 

一方、細菌による感染の場合、主に大腸に障害を起こします。細菌による感染は、大腸の粘膜に強い炎症を起こすことが多く、分泌液が増加し高熱や出血を伴う下痢が起こりやすいといわれます。自然に治りますが、抗菌薬による治療を考慮する必要があります。

 

  ウイルスによる下痢 細菌による下痢
障害をおこす部位 小腸 大腸
炎症 軽度 強い
メカニズム 水分が吸収がされにくくなる 粘液などの分泌液が増加
特徴 熱は高くなく、出血はない 高熱や血便
便の状態 水様便(オシッコのような 泥状
治療 自然治癒(2~3日) 自然に治癒するが、抗菌薬治療を考慮

 

急に発生する「急性下痢」の多くは、ウイルス性の「急性胃腸炎」です。ウイルス性の下痢の一番重要なポイントは、オシッコのような下痢であるということです。また、軽度の吐き気、嘔吐、お腹の痛み、食欲低下を伴います。しかし、これらの症状ではない場合は、病院を受診したほうがいいといわれます。

 

 

【薬剤性の下痢】
抗がん剤や抗菌剤、免疫抑制剤、消化器用薬などの薬剤でも下痢を起こすことがあります。薬の種類にもよりますが、薬を飲み始めて1~2週間以内に下痢が起こるといわれます。抗がん剤では、数クール経過したあとになど長期間起こらないこともあります。一方、抗菌薬では数日以内に下痢が起こることが多いです。

 

 

【下痢を見極めるポイント】
まずは、その下痢がどれくらいの期間続いているかを確認します。以下、疑われる病気です。

2週間以内(急性) 2週間以上(慢性)
ウイルス性腸炎 膠原線維性大腸炎
細菌性腸炎 下痢型過敏性腸症候群
出血性腸炎 吸収不良症候群
偽膜性腸炎 クローン病
  腸結核

 

そして、便の性状(かたち)、他の病気がないか、薬を飲んでいないか、感染性腸炎が流行していないかを確認することが大切だといわれます。

 

 

【下痢への対応】
どの下痢の場合も、脱水には注意であるため、水分摂取だけは必ず行いましょう。「水を飲むと下痢が悪化する」ということは誤解です。少ない量でたくさんの水分が吸収できるスポーツドリンクなどが効果的です。

渋り腹の注意点

便意をもよおすのに便がでない
カスのような少量の便しか出ないのに頻回に便意をもよおす

 

これらの状態を、渋り腹(しぶりばら)といいます。渋り腹では、直腸が刺激され痛みが起こります。直腸の炎症による渋り腹は、問題ないことが多いです。

 

しかし、直腸周囲の炎症でも渋り腹がおこります。つまり、虫垂炎や骨盤内の腹膜炎などの緊急性の高い病気でも渋り腹がおこるということです。

 

渋り腹と下痢は異なることを理解し、渋り腹があるときは病院を受診しましょう。

 



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