生活の質をあげる|QOL(生活の質)とQALYsとは

QOL(クオリティオブライフ)とは、一般的に、ひとりひとりの「人生の内容の質」や「社会的にみた生活の質」を指します。つまり、ある人がどれだけ「人間らしい生活」や「自分らしい生活」を送り、「人生に幸福を見出しているか」をとらえる概念だといわれます。この「幸福」とは、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られます。

 

「医療=人をみるもの」「医学=病気を見るもの」。この考え方が主流でしたが、近年、医療も科学的側面が強くなり、「病気は治ったが患者は死んだ」という状態が問題となりました。時代とともに、医療の目標は「治癒からQOLの向上へ」と変化しています。

 

「麻痺により身体の自由がきかない状態」、「いたずらな延命治療」、「患者さんに負担がかかる治療を継続すること」は、患者自身が理想とする生き方を実現できない場合があります。このような状況を「QOL(生活の質)が低下する」と呼びます。

 

これに対し、患者さんの「尊厳をより保つことができる生活」が実現できる場合、「QOL(生活の質)が向上する」といいます。つまり、QOLは、食事、睡眠、排泄や精神的苦痛、からだの痛みなどによって上がったりさがったりするのです。

 

また、近年では、QOLを数値として計ることができるようになっています。過去1ヶ月の健康状態に関する36個の質問を行い算出する「SF-36」等、多くの「QOL測定方法」があります。

 

 

【QOLと医療】
辛い状態が続くとQOLが低くなりますが、だからといって生きる意味がないと考えるのは間違いです。QOLが低いならば、高めれるよう改善すればいいのです。
医療や薬を使う目的のひとつが、患者さんのQOLを改善させることです。

 

ここで、新たに疑問が生じます。薬を使えば必ずQOLは高くなるのでしょうか。「薬を使ったのにQOLが改善しないと意味がない!」という考えは、ちょっと極端すぎます。例えば、血圧の薬で考えると、血圧が下がったからといって、ほとんどの場合QOLは改善しません。血圧を下げる大きな目的は、病気にならないことです。

QALYs(質調整生存年)とは

そこで、登場するのがQALYs(Quality Adjusted Life Years)という考え方です。QALYsは、クオーリーズと呼ばれ、日本語では「質調整生存年」と訳されます。QALY(クオーリー)と呼ぶこともあります。

 

QOLは、ある時点の生活の「質」をさしますが、そのQOLが高い状態が続けば続くほど「質の高い人生」といえるでしょう。QALYsは、QOL(質)生存年数(量)を同時に考える指標です。

 

QALYsは、横軸に生存年、縦軸にQOLを表すグラフを使うと簡単に考えることができます。QOLは0を死亡、1を完全な健康とした数直線上で示します。このようなQOLを効用値(utility)と呼びます。

 

ここで、AさんとBさんを例に考察してみたいと思います。

Aさんは、10年後にちょっと病気になり、QOLが0.8に下がりました。また、20年後に大きな病気で半身麻痺になり、QOLが00.2まで下がり40年後に亡くなりました。Bさんは、30年間健康でしたが、急に亡くなってしまいました。QALYsは、年数×QOLで下記のように計算されます。面積と考えると分かりやすいです。

 

Aさん:10×1.0+10×0.8+10×0.2+10×0.2=22(QALYs)
Bさん:10×1.0+10×1.0+10×1.0+0×0=30(QALYs)

 

Bさんは10年早く亡くなってしまいましたが、健康で明るい人生だったのかもしれません。薬を飲む意義を考える際に、QOLやQALYsが役に立ちます。覚えておいて損はないと思います。ちなみにQALYsは、医薬品を客観的に評価する際にも用いられます。

 

日本でも1錠6万円を超える高額な医薬品が発売されており、費用対効果についても関心が高まっています。患者さんの状態にもよりますが、1QALY獲得に対しおおむね10万ドル未満との結果が示されており、費用対効果が良いとのことです。



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