「薬は水で飲みましょう」の真実(前編)

「薬は水かぬるま湯で飲みましょう」よく聞く文言ですが、なぜ水で飲まないといけないのでしょうか。水は水でも、ミネラルウォーターはどうなのでしょうか。

 

グレープフルーツジュースや、アルコール、カフェイン、牛乳など、「色々な飲料と薬の飲み合わせ」を知ることは、薬の副作用や健康被害を防ぐために、非常に大切です。

 

 

【錠剤・カプセル・粉薬の吸収】
薬には、錠剤やカプセルなど、いろいろな「かたち」があります。どの「かたち」の薬も、「水かぬるま湯で飲むこと」ができれば大きな問題はありません

 

口から飲む薬(内服薬)は、飲み込まれた後、食道を通りに運ばれます。その後、薬は、溶けて小さい分子になり、胃から小腸へと運ばれます。

 

小腸において、薬の分子が吸収され、からだの中(血液の中)に入り込み全身に運ばれます。この「薬の吸収のメカニズム」は15~30分くらいの時間で行われます。とても大切なので、是非覚えてください。

 

 

【薬を水で飲む理由】
薬は、食道→胃→小腸と、スムーズに到達することが非常に大切です。水で薬を飲まない場合、薬が食道や胃の一部にひっかかり、そこを刺激し障害(炎症・潰瘍・出血など)を起こす可能性があります。

 

特にゼラチン製の殻に入ったカプセルは、唾液など少量の水分では溶けきらず、のどや食道にひっかかる危険があります。

 

また、薬の周りに水分がない場合、薬がしっかり溶けず、分子が広がらなくなります。薬の分子が広がらないと、薬の吸収がしっかりと行われなくなります

 

そうなると、薬の効果が遅く出たり、効果が低くなることも考えられます。対策としましては、コップ1杯(180~200ミリリットル程度)の水やぬるま湯と一緒に飲むとよいとされています。

 

さらに、薬を製造したり販売する製薬会社は、水と一緒に飲んだ場合を想定して安全性を担保しています。

 

製薬会社は、500~1,000億円という莫大な費用と、9~17年という長い年月をかけて新薬を開発しています。その中で、薬の安全性と効果が保証されなければなりません。

 

そのために、様々な試験を行いますが、そのほとんどが水を用いた試験なのです。つまり、ジュースやコーヒーなどを用いた試験は、基本的に行われておらず、薬をジュースやコーヒーで飲んだ場合に、どれくらい薬が効くのか、または効かないのか、飲んでみないとわからないのです

 

薬が効きすぎてしまうと副作用の危険性があり、薬が効かないと病気が悪化する危険性があるため、水で薬を飲むことが安心だと思います。

 

 

【薬の効果に影響する飲料】
ここからは、薬の効果を強めたり、弱めたりする(相互作用をおこす)具体的な飲料を紹介します。

アルコール

アルコールには、エタノールが含まれます。薬は、水への溶け方とエタノールへの溶け方が真逆であるものが多く存在します。

 

つまり、溶け方が変わり、薬の効果が強く出たり、出なかったりする危険があります。基本的に、アルコールで薬を飲むべきではありません。

 

特に、睡眠薬や安定剤などの催眠鎮静薬、鼻水やかゆみを抑える抗アレルギー薬とお酒を一緒に飲むと強い眠気を起こし、ひどい場合は意識障害を起こす可能性もあり大変危険です。

 

睡眠薬とお酒を一緒に飲み、「次の日の朝、家の中が散らかり食べ物がなくなっていた」という事例があります。

 

この事例は、「本人が覚えていない間に飲食や家を散らかしていた」という私が経験した実話です。お酒と薬が共に「脳に作用」し、「薬の効果が強くあわられた」ためにおこった副作用だと考えられます。

 

このほかに、薬とアルコールの相互作用として、薬の効果が強く出ることによる、呼吸が抑えられたり心臓の停止、アルコールが分解されなくなることによる嘔吐(おうと)、顔面紅潮(顔のほてり)、血管が広がり低血圧や頭痛、失神などが起こる危険があります。

 

アルコールの分解を抑える代表的な薬としてメトロニダゾール(一部商品名:フラジールなど)があります。メトロニダゾールは、ピロリ菌の除菌やトリコモナス症、感染性腸炎など幅広く使用されるため、注意が必要です。

 

 

 

「薬は水で飲みましょう」の真実(後編)に続きます。後編では、カフェインやタンニンを含む、コーヒーや緑茶、牛乳やグレープフルーツ、ミネラルウォーターとの飲み合わせを解説いたします。

 



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