「骨質」が悪いと骨は弱くなる|骨粗しょう症(骨粗鬆症)とは
骨粗しょう症(骨粗鬆症)とは、YAMが70%未満の骨密度が低下した状態をさします。YAM(Young Adult Mean)とは、骨密度を計算したものであり、「若い人(20~44歳)の骨密度の平均値」と比べて、どれくらい減っているかを表します。例えば、「YAM70%」とは、「骨密度が若い人の平均の70%」であることを示します。
日本において、人口の急速な高齢化に伴い、「骨粗鬆症の患者さん」は年々増加しつつあります。そして、その数は1,300万人と推測されています。骨粗鬆症では、椎体、前腕骨、大腿骨近位部などの骨折が生じやすく、寝たきりの原因でもあり、社会的にも重要な課題となっています。
骨粗鬆症では、骨折をさせないことが重要とされますが、そのためには骨密度以外にも重要な要因があります。それは、「骨質」です。骨の強さ(骨強度)は、骨の量である「骨密度」と、骨の形態・構造・骨代謝回転・石灰化などをあらわす「骨質」の、2つの要因からなります。
骨強度=骨密度+骨質
「骨質」が悪いと骨は弱くなり、骨密度が減っていなくても「骨折の危険性」が高まります。骨質は、食事や運動不足などの生活習慣が深く関わっており、年とともに低下するといわれます。
骨粗鬆症の予防
骨粗鬆症を放置すると、骨折の危険性が高まります。骨折すると、骨格の変形などの身体障害が起こります。そして、痛みや、運動機能の低下、精神的な負担、社会参加や幸福感の減少などを生じ、生活の質(QOL)を低下させます。
若いうちから、よい生活習慣、食生活と運動の習慣を身に付けることが大切です。栄養素としては「カルシウム」摂取が、身体活動では「荷重的な運動」が、高い骨密度獲得のために重要です。荷重的な運動とは、ウォーキングやランニング、ジャンプなどの着地の衝撃を受けるような運動、スクワットや腕立て伏せなどをさします。
また、たばこ(喫煙)とアルコール(飲酒)は、骨折のリスクを高くします。禁煙をすることや、お酒を飲みすぎないなどの対策も大切です。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療は、骨折のリスクを減らすこと、日常生活動作(ADL)の改善、痛みを減らすこと、生活の質(QOL)の改善などを目的とします。
【カルシウムの摂取】
からだの中のカルシウムの99%は骨にあり、食事におけるカルシウムの摂取は大切です。しかし、カルシウムの吸収は、ビタミンDの栄養状態の影響をうけ、たくさん摂取したからといって全て吸収されるわけではありません。カルシウムを摂ることだけでなく、栄養素全体を考えることが重要です。
カルシウムの推奨量(mg/日)
年 齢 | 男 性 | 女 性 |
---|---|---|
12~14(歳) | 1,000 | 800 |
15~17(歳) | 800 | 650 |
18~29(歳) | 800 | 650 |
30~49(歳) | 650 | 650 |
50~69(歳) | 700 | 650 |
70歳以上 | 700 | 600 |
厚生労働省:日本人の食事摂取基準2010年版
カルシウム摂取量が少ない場合、骨折の発生が多いので注意が必要です。カルシウムとビタミンDを組み合わせることで「骨密度の上昇」、「骨折の抑制」が期待できます。
【運動をおこなう】
運動によって、骨密度の維持・上昇効果が期待できます。骨に十分な負荷をかけることだけでなく、骨を守る筋肉をつけることも大切です。筋肉がつくことによって、ふらつきにくく、転倒する危険性も減ります。
誰でも手軽にできる歩行運動(ウォーキング)がおすすめです。背筋を伸ばして歩幅を広くし、リズミカルに歩きます。できるだけ毎日、時間としては30分を目安にすると良いでしょう。歩くことは、骨や筋肉だけでなく、血流を改善し「からだ全体」に良い影響を与えます。痛みで歩けない場合歩行は、以下の運動を毎日10回程度行いましょう。
出典:公益財団法人 骨粗鬆症財団
【骨粗鬆症薬物治療】
薬の種類 | 詳細 | 注意点 |
---|---|---|
カルシウム薬 | わずかではあるが、有意に骨密度を上昇させる効果がある。 | 便秘、胸焼け、胃腸障害 |
女性ホルモン薬 |
その種類にかかわらず閉経後女性の骨密度の上昇ないし維持効果を有する。 | 静脈血栓塞栓症、長期不動状態 |
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM) | 椎体骨折の発生が低下する。 | 深部静脈血栓、視力障害 |
活性型ビタミンD3薬 |
活性型ビタミンD3は、腸管でのカルシウム吸収促進と、骨石灰化促進を介して骨密度を増加させると考えられている。 | 高カルシウム血症 |
ビタミンK2薬 |
腰椎骨密度をわずかではあるが上昇させる効果があるといえる。 | ワルファリンなどの併用薬 |
カルシトニン薬 | 骨密度上昇効果は複数の臨床試験により証明されている。 | 悪心、顔面潮紅 |
副甲状腺ホルモン薬 | 骨密度上昇効果は腰椎、大腿骨近位部とも認められる。 | 骨肉腫患者、悪性腫瘍の骨転移がある方には使用不可 |
ビスホスホネート薬 | 飲み方が難しい反面、骨折抑制の効果を持ち、臨床現場では最も使用されている。 |
胃腸障害 |