顧客満足のためのクレーム対応(前編)

私が学んだ「クレーム対応」に関する研修をまとめました。クレームへの対応の仕方、クレームを「組織力を高めるための材料」に変えるための情報など、得する情報が満載です。前編ではクレームの概要を、後編では具体的な対策を学べます。

 

【念頭においておくべき考え方】
この絵をご覧下さい。どのような絵に見えますでしょうか?

 

「若い女性」でしょうか?それとも、「老齢の女性」でしょうか?両方を見ることができた方もいらっしゃるかもしれません。

 

 

人の価値観は全て違います。顧客には、それぞれに違う考えがあり、その視点で「ものごと」をみています。このことを念頭においておくことが「クレーム対応」においてとても重要です。また、クレーム対応は「トラブルコミュニケーション」であるため、相手の感情に共感するなどの相手を想う気持ちが大切です。

 

クレームとは単なる苦情とは限りません。クレームを日本語にすると「難癖」「いちゃもん」「疑問」「苦情」「トラブル」「わがまま」「要望」「ご意見」「確認」「不満」など様々な表現ができます。

 

例えば、「もう、30分も待っていますが、あとどれくらいかかりますか?」という文言も、強い口調であれば、「不満」と捉えられますし、柔らかい口調であれば「確認」と捉えます。つまり、顧客の伝える内容が一緒でも「伝え方」が違う場合、我々の捉え方は、その「伝え方」に対応しなければなりません。「不満」に対する対応と、「確認」に対する対応は異なります。

 

また、「基本的に、顧客は我々の仕事内容を知らない」ことも念頭におかなければなりません。我々の業界での実例ですが、「薬局のサービスを知っていますか?」という1046名を対象にした、日経DI2012年1月号のアンケート結果が以下の表です。

我々主な仕事である「患者に薬の副作用が出ていないか調べる」「患者に薬の効果が現れているのか確認する」を知っている方は、半数にも満たないのです。薬剤師の伝える力の力不足かもしれませんが、それが事実であり、多くの業種に言えます。

 

【クレームの発生要因】
顧客は、それぞれに期待値をもってやってきます。それを越えられるかどうかがポイントとなります。期待値を越えられた場合のみ、顧客は「満足」します。期待値は、人それぞれであるため、その見極めも重要です。さらに、期待値は一定ではなく、インターネット、メディア、雑誌の情報などにより期待値は上がり、下がることはありません。

 

 

顧客の欲求(期待)

欲求の種類 顧客の期待値 不満例
①機能・品質欲求 高度で的確な医療を受けたい

的確な説明が聞けない
治療をしても治らない
治療技術に不安を感じる

②経済的欲求 医療サービスに見合う金額

治療代が不明瞭 ※
必要以上の指導料
治療代が他より高い

③愛情欲求

親身になって欲しい
優しく対応して欲しい

心がこもっていない
事務的な応対
スタッフが横柄

④尊厳欲求 一人の大切な患者として対応してほしい

順番を後回しにされた
話を聞いてくれない
名前を呼んでくれない

※病院や薬局は、他の業種と異なり、サービス後に金額の請求が行われることが多いです。普段、食品を買う場合は、値段をみてどの品物を買うか選べますが、医療の場合そうでない場合が多く存在します。その不明瞭さが原因での不満は、多くあるようです。

 

①②はお金などの実質的なものを要求される場合が多く、③④は土下座などの心情的なものを要求される場合が多いです。

 

堪忍袋の緒が切れた」と聞いたことがあると思います。人はそれぞれ、違う大きさの堪忍袋を持っています。堪忍袋の中に、待ち時間、態度、寒いなどの不満を貯めていき、それが溢れた時に堪忍袋の緒が切れるのです。堪忍袋へ、不満を貯めさせないよう常に注意しなければなりません。そして、この時に注意すべきことがあります。

 

それは、飛び出てきた「クレーム」だけを見てはいけないことです。堪忍袋の緒が切れた際に出てきた「クレーム」は、本質からずれており、そのクレーム自体はきっかけに過ぎない場合あります。「本当は何に対してクレームを言ったのか」正確に判断しなければ、問題は解決しないのです。

 

【サイレントクレーマーの脅威】
クレームは、4%の「伝えるクレーム」と96%の「伝えないクレーム」で構成されています。伝えるクレームを「顕在クレーム」、伝えないクレームを「潜在クレーム」といいます。

 

 

この伝えない「潜在クレーム」は、注意しなければなりません。不満があるにも関わらず、その場では何も言いません。このような人の約65%は、二度とお店に来ません。来ないだけならまだ良く、ツイッターやブログ、2ちゃんねる、近所や家族へ、悪い評判を流す可能性が高いのです。

 

クレームは、「いつも期待して来ているのに、なんでこんな思いをしないといけないのか」という期待値の裏返しとも考えられます。クレームを言うこと自体、労力が必要で不愉快なのです。その労力を使って言ってくださる「クレーム」は貴重な意見であり、クレーマーはサポーターであるとも捉えられます。(もちろん、全てがそうではありません)

 

【クレームの種類】
クレームは、「合理的な理由による正当なもの」と「要求が想定の範囲を超えたり、根拠がない不当なもの」に分けられます。前者は先述のとおり、十分に耳を傾けるべき貴重な意見です。しかし、後者は、言いがかり、理不尽な要求、暴言、暴力などを行う「悪質クレーマー」によるクレームです。

 

悪質クレーマーは、その人自身が問題なので、我々は関係ないなどと思わないでください。実は、我々の対応次第で、「悪質クレーマー」を生み出す危険性があるのです。ここで大切なのは、「初期対応」です。

 

【クレーム対応のポイント】
クレーム対応で重要な初期対応時に、決して「いやだな、面倒だな」と思いながら対応してはいけません。もし、自身が買った商品が壊れていてクレームを言った際、店員にだるそうな態度をされたらどうでしょうか。怒りが増し、商品についてだけでなく、他の悪い点を探し、相手を責めてしまうかもしれません。

 

 

クレーム時に求められるものは「誠意態度、わかりやすい説明」なのです。誠意とは、男女で感覚に差があるようですが、正直であることやしっかり話を聞くことが大切です。男性は、解決型で結論を出そうとするため「正直さ」が重要です。女性は、解消型で話を聞いてくれるだけで良く「しっかり話を聞く」ことが重要である場合が多いです。

 

【初期対応の重要性】
医療訴訟の55%は、クレームの初期対応次第で、起こらなかったと言われています。初期対応では「先入観を持たない」ことが非常に重要です。例えば、薬が10個足りなかったと訴えられた際に、「(相手が)勘違いしているのでは?」、「そんなはずはない」、「悪質クレーマーか?」などと考えてはいけません。相手が不快に思っていることや、不満を感じている「事実」を受け入れ、相手の「私の心情を理解してほしい」という気持ちに誠意をもって対応することが重要です。

 

クレーム対応(後編)に続きます。後半では、具体的かつ実践で活用できる文言などのポイントを学ぶことができます。

 

 

【薬剤師じゃなくても薬がわかる本】

 

 

 

 

 

 




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