日本の医療費と社会保障

【国民皆保険と医療費】
わが国は、昭和36年(1961年)以来、全ての国民がいずれかの医療保険制度に加入するという国民皆保険制度のもと、一定の自己負担でいつでも必要な医療を受けられる環境が整備されています。国民皆保険制度により、わが国の平均寿命は伸長し、世界に冠たる長寿国となっています。
一方で、急速な高齢化が進んでおり、それに伴う医療費の増加という、将来の国民皆保険制度の維持に対する不安要因への対応策として、医療保険制度の改革が継続して実施されています。
国民医療費が初めて集計された昭和29年度(1954年度)の国民医療費は2,152億円でしたが、昭和36年(1961年)の国民皆保険制度導入以来増え続け、昭和40年度(1965年度)には1兆円を超え、昭和53年度(1978年度)には10兆円を超え、平成2年度(1990年度)には20兆円を超えました。介護保険制度が施行され、医療の一部が介護に移行した平成12年度(2000年度)を除いて毎年約1兆円にのぼる増加を示しております。平成23年度(2011年度)は37.8兆円となっており、今後も増加する見通しです。国民総生産(GDP)に対する総医療費の比率は10.3%(2012年)ですが、アメリカ、ドイツ、フランスでは11%を超えています。高齢化が進んでいることを考慮すると、日本の医療制度は効率的です。

 

 

【2014年までの社会保障給付費の推移】

 

厚生労働省資料

 

 

【社会保障に関わる医療費の将来推計】

 

厚生労働省資料

 

国民皆保険制度を将来にわたって安定的で持続可能なものとするため、患者負担の段階的な引き上げなどを実施するとともに、平成14年度(2002年度)からは社会保障費の伸びを抑制する施策が実施に移され、診療報酬・調剤報酬も数回にわたり引き下げ改定となるなど、医療関係者にとっても厳しい環境が続いています。

 

 

【今後にむけた社会背景】
今後の社会背景を予測する指標は様々あるが、直近の指標としては、政府が平成24年(2012年)2月17日に閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」があげられます。大綱では、「今後さらに、高齢者数は2040年頃まで増加し続け、一人暮らし高齢者も増加していく。2020年には高齢化率が30%近くに達すると見込まれるなど、我が国の高齢化の水準は世界でも群を抜いたものとなる。」「今後、人口構成の変化が一層進んでいく社会にあっても、年金、医療、介護などの社会保障を持続可能なものとするためには、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心という現在の社会保障制度を見直し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が確保された制度へと改革していくことが必要である。」「今後一層の少子高齢化が進展し、社会保障費が増大していく中で、社会保障制度の持続可能性を確保し、同時に2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する等の財政健全化目標を達成するため、更なる取組を行っていくことが必要である。」等と記載されています。

 

 

【日本の医療に対する国民の意見】
2015年1月26日の日経新聞(日経リサーチ1000人のアンケート)によると、「日本の医療は多すぎると思う」と回答した方は70.7%であり、その理由では「高齢化で医療機関の受診が増加」「薬や複数医療機関の受診など無駄が多い」という意見が大半を占めていました。高齢化に伴い、医療機関の受診や薬の量が増えているのは間違いありませんが、運動や食事などの生活習慣の改善で「薬の量を減らす」ことができます。病気の予防に力を入れることは大切です。また、医療の無駄に関しては、薬剤師の介入で改善できることが多くあります。薬の重複や無駄を感じるようでしたら、お近くの薬局・薬剤師に相談することをおすすめします。

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