お薬手帳とお金(28年3月31日まで)

「お薬手帳を断れば、薬局の支払いが20円安くなる。」
2014年、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」で、このような情報が広がりました。

 

薬局での支払い金額は、厚生労働省が告示する「調剤報酬点数表」にもとづいて計算されます。そして、「調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。」と決められています。

 

つまり、薬局(薬剤師)は、「お薬手帳で患者さんの情報を確認し、手帳を介して情報提供を行うべき」ということです。

 

もし、これらの作業を行うことができなければ、薬局への報酬は、41点から34点(410円から340円)へ7点(70円)減額されます。この7点(70円)の一部は患者さんが負担しているため、3割負担の人では20~30円ほど負担金が安くなります。

 

解釈によっては、お薬手帳を持参しなければ、お会計が安くなるといえます。

 

お薬手帳には、飲んでいる薬の名前だけでなく、利用者名、性別、生年月日、電話番号、血液型、緊急連絡先、副作用歴、アレルギー歴、受診の記録、主な病気などを記載できます。「薬や身体に関する大切な記録」を管理する役割があります。

 

さらに、複数の病院(医療機関)で出された薬の「飲み合わせ」の確認を、薬剤師や歯科医師、医師に行ってもらうためのツールでもあります。

 

は、時として、命に関わる副作用を起こしてしまいます。そして、人は「その副作用」を記憶し続けることは困難です。しかし、お薬手帳さえあれば、「その副作用」を記録することができます。お薬手帳を活用できなければ、命を落とす危険につながります。

 

ツイッターでは、「安くなるならお薬手帳は持つべきでない」等の否定的な声があったようです。悪気なく、発信したのだと思いますが、その発信をした方は責任が取れるのでしょうか?何気ない一言で、「取り返しのつかないこと」を、知らないところで起こしているかもしれません。

 

ちょっとしたコラム 【知と権力】
昔、本というものは支配者階級などの一部の人間しかもっておらず、限られたものでした。後に、印刷技術が進歩し、多くの人々が本を手に入れ「知を共有」するようになりました。この際、本の著者が誰であるかが重要であり、「権威」は本の著者にありました。

 

しかし、現代ではインターネットが発達し、誰でも情報を発信することができます。それは、「我々が権威を担う」時代になったと考えられます。ここで重要なのは、「何かを発信し他人に影響を与えるということは、権力を行使していること」だということです。

 

「お薬手帳は持つべきでない」と発信し、他人に影響をあたえることは「小さな権力」の行使であることを自覚しなければなりません。昔は、権力者といわれる方だけしか行えなかったことを簡単に行える時代なのです。情報の発信は正しく行うべきです。

 

ここまで、お薬手帳はとても大切だと書かせていただきました。しかし、「20円安くなるなら、お薬手帳なんて絶対いらない」という考えも間違いではありません。お薬手帳のメリットとデメリット知った上で、必要なのか判断してもらいたいと思います。知らないことで、損をしてもらいたくありません。

ちょっと苦言

平成26年度より、お薬手帳の有無によって「保険薬局の報酬が変動する制度」がつくられました。薬局は、5万件あるといわれるコンビニよりも多く、約5万5000件あるといわれます。

 

この薬局業界での生き残りが大変であることは事実です。しかし、下の図のような「ほとんど記録ができないお薬手帳」を患者さんに渡すだけで、高い報酬を得ようとする行為はいかがなものでしょう。このお薬手帳には、どんな意味があるのでしょうか。

 

 

お薬手帳は、患者さんを守るためのものです。病院から近いだけでなく、患者さんを第一に考える薬剤師がいる薬局を利用してください。

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