歯の健康はからだの健康につながる
年齢とともに、むし歯や歯周病が増え、「自分の歯」を失ってしまいます。そうならないために、厚生労働省や日本歯科医師会が、8020運動(はちまるにいまるうんどう)を提唱しています。
「80歳になっても20本以上の自分の歯を残し、なんでもよく噛める快適な状態を保とう」という運動です。
なんでもよく噛める状態は、どのように快適なのでしょうか。「よく噛むこと」が大切であるとよく耳にしますが、歯と全身の健康には密接な関係があるのです。
歯と健康
歯と胃腸
噛むことは、食べ物を細かくするだけでなく、唾液の分泌を増やし消化や吸収を助けます。細かい食べ物と唾液中の消化酵素(アミラーゼなど)が混ざると、食べ物は消化・吸収されやすくなります。消化・吸収しやすい状態の食べ物は、胃腸への負担を軽くします。
歯と脳
噛むことは、脳の血流を増やしたり、脳への刺激になるといわれます。脳が活性化し、運動や認知機能(認知症など)に、良い影響があるという研究もすすんでいます。
歯と骨
歯はあごの骨に支えられています。歯を失うと、あごの骨が徐々に弱く、小さくなってしまいます。あごの骨が弱ると、その部分を骨折しやすくなったり、老けて見えたり、言葉を出すことに悪影響が出る場合があります。
歯と肺
歯を失ったり、口腔のケアができていないと、誤嚥(ごえん)しやすくなります。誤嚥とは、食べ物や飲み物、唾液が誤って気管に入ってしまうことです。誤嚥によって、口の中にいる細菌が肺に入り込み、肺炎(誤嚥性肺炎)をおこす場合があります。高齢者は特に注意が必要です。
歯と動脈硬化
歯茎の炎症がひどい人ほど、歯周病菌が血管の中に入り込みやすくなります。血管の中に入り込んだ歯周病菌は、血管に炎症を起こし、血管を硬くしたり、動脈硬化を進行させると考えられています。
歯と生活
歯を失うと、食事が楽しくなくなるだけでなく、笑顔に自信がもてなくなります。そして、人とのコミュニケーションも楽しくなくなり、生活の質(QOL)を低下させてしまいます。
歯と生活習慣病
食事をよく噛んで食べることで、満腹感を感じやすくなり、食べ過ぎを予防できます。ちょっとした心がけで、メタボを予防できます。また、歯周病を治療することで血糖値が正常に近づくことがあります。歯や口腔内の健康を保つことが大切です。
歯を守るための食生活
だらだら食べない
間食の回数が多かったり、口の中に飲食物が長く残っているとむし歯になりやすくなります。間食をやめることは、難しいので、おやつの時間を決めるなどの対応をしましょう。
よく噛んで食べる
よく噛むことは、歯を守るためにも重要です。噛むことによって、唾液の分泌が多くなるためです。唾液は消化だけでなく、口の中を洗い流したり、酸によって溶けた歯を修復する役割があります。ガムを噛むことも、唾液を分泌させるために役立ちます。
注意したい食べ物
一般的に、「甘い物は歯を溶かす」といわれますが、甘い物そのものが歯を溶かすわけではありません。甘い物が、むし歯菌のエサとなるため注意なのです。また、やわらかい食べ物は、歯にくっついて歯磨きでとりのぞきにくくなるため、注意が必要です。
歯を守る食品
砂糖が入っていないヨーグルトやチーズは、歯を守るといわれます。これらの食品は、溶けた歯を修復する「再石灰化」に必要なカルシウムを多く含んでいるためです。また、食物繊維が多い食品や硬い食べ物は、噛む回数を増やし、歯を守ります。