心臓の動きを調節する房室結節
房室結節は、大きく2つの役目をもっています。
- 少しの時間をおいて心室に刺激を伝えること
- 洞結節の予備としての自動能
房室結節は、このように話します。
俺の役目を知っているかい?おおきく、2つあるよ。
ひとつは、血液がすぐに心室に流れないようにタイミングを取っているんだ。意外かもしれないけど、心臓は適当につくられてるんだよ。(※)
もうひとつは、親父(洞結節)が休んだら、変わって全体に動けと命令する役目もあるんだよ。
※心臓の構造は雑(適当)な部分があります。
少しの時間をおいて心室に刺激を伝えること
房室結節は、心房の収縮が終わった後、少しの時間をおいて心室に刺激を伝えます。この仕組みは、特別な装置ではなく「細胞の並び方」が関係しています。細胞の並びは、「疎(あらく、まばら)」であり、細胞から細胞への電気刺激が伝わりにくいのです。
洞結節の予備としての自動能
房室結節は、洞結節が規則的に自動能を発揮してくれなくなった時の予備として働きます。1分間に約50回、興奮が可能な仕組み(自動能)を備えています。
洞結節で発生した電気刺激が、房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維と順次伝わります。その電気刺激で、心臓は心房から心室と順次収縮しています。
この電気刺激の流れの中、房室結節の「細胞の雑な並び」があることで、「心房の収縮」から「心室の収縮」に少しの時間をおかせることができています。さらに、細胞の並びはいろいろであり、電気刺激が「速く伝わる路」や「遅く伝わる路」など、複数の路が存在します。
心臓の収縮のリズムをとるためには、この「雑な並び」が必要です。しかし、この「雑な並び」によって、不具合が生じることもあります。
その不具合が、房室ブロックなどの「不整脈」です。細胞の並びが雑であり、電気刺激が正確に伝わらないことや、細胞の不具合で使われる路が変わるなどの原因が考えられます。つまり、不整脈の原因には、心臓の雑な構造が関係しているのです。
刺激を伝える専門家、ヒス束・脚束・プルキンエ線維
ヒス束・脚束・プルキンエ線維は、心室の全ての細胞を一斉に収縮させる大事な線維です。
この線維の電気刺激は、ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維と、とても速く伝わります。ひとつの電気刺激が、脚で枝分かれして伝わるため、伝導の途絶(ブロック)を起こすことも多いのです。
これらの線維は、このように話します。
俺たちが刺激を伝えるのは、とても大変だよ。もし不具合があったら、心臓の動きはバラバラになるからね。伝える路が、枝分かれするところ(右脚・左脚)もあるしね。
ヒス束は、細胞のかたまりですが、次につづく脚束は右と左にわかれています。左脚は、さらに前枝・後枝にわかれます。脚は、心室の内面を覆うように張り巡っています。
プルキンエ線維は、脚からの刺激を心室全体に伝える役割を担っています。この細胞の並びは、密で心室の内面の細胞の間に潜り込んでいます。この線維細胞での刺激伝導は超スピードで、心室の細胞を一斉に興奮させます。
つまり、心臓が収縮するために最も重要な役目をしているのかもしれません。
高齢になると、ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維への電気刺激に不具合が生じやすくなります。電気刺激が伝わりにくくなることもあれば、途中で絶えることもあります。これが、一般的に多くみられる不整脈の「脚ブロック」です。
実は、これらの3つの線維も、自動的に興奮することができます(自動能があります)が、1分間に30回ぐらいであり、人の命を維持するだけの能力はありません。
心臓の本家、心室
心室は心臓の働きの中心です。したがって、心房に比べて強固につくられています。
また、血液を「肺に送る右心室」と「全身に送る左心室」では、力の度合いが異なります。横断面からみても、左右の心室の壁は大きく異なっています。
右心室は、左心室の丸い部屋を覆うように半円形で、血液を貯める容積も少なく筋層は薄いのです。左心室の外壁(自由壁)は、右心室に比べてずっと厚く、筋線維が海綿のように交差しており強靭にできています。心室の内面は、心房のようになめらかではありません。
続いて、心臓から血液を押しだす大きな力
関連ページ
第1章 心臓の構造
▶心臓のつくりを知る
▶心臓の電気刺激、心臓が興奮するときについて
▶心臓の各部位の構造(洞結節、心房)