経口血糖効果薬選択のアプローチと注意点

糖尿病の薬物療法の大前提として、まずインスリンの導入が必要かの判断を行います。そして、インスリンが必要な場合には、インスリン導入を先延ばししてはいけません。

 

経口血糖降下薬を併用する場合、原則として3種類までとします。それでも数値が改善しない場合には、インスリンを導入します。

 

インスリンが必要な場合は、以下のとおりです。(インスリン療法の相対的適応

  1. 著明な高血糖(例:空腹時血精250mg/dL以上、随時血糖350mg/dL以上)を認める場合
  2. ケトーシス(尿ケトン体陽性など)傾向を認める場合
  3. 経口血糖降下薬だけでは、良好な血糖コントロールが得られない場合(スルホニル尿素薬の一次無効、二次無効など)
  4. 重症の肝障害・腎障害を有する例で、食事療法でのコントロールが不十分な場合

 

 

2型糖尿病の病態と経口血糖降下薬の選択
2型糖尿病では、インスリン分泌能低下、インスリン抵抗性の増大のいずれかまたは両方が、「インスリンの作用不足」を引き起こしています。

 

糖尿病の初期には、食後の高血糖が起こり、進行すると空腹時高血糖が起こります。高血糖の状態がつづくと、さらなるインスリン分泌能低下とインスリン抵抗性が進行する悪循環におちいります。これを糖毒性といいます。

 


経口血糖降下薬は、インスリン抵抗性改善型インスリン分泌促進型糖吸収・排泄調整型の3群にわけられます。

 

治療の基本は、食事療法や運動療法などの生活習慣の改善です。薬を使用する場合は、必要に応じて1種類から開始します。十分な効果が得られない場合には、作用機序の異なる2種類を併用します。

 

経口血糖降下薬とその副作用
副作用に関しての知識がないと、重篤な問題を引き起こす危険があります。薬ごとの作用を理解することは大切です。経口血糖降下薬は、心臓、腎臓、肝臓の機能によっても使い分けられます。各薬剤の特徴については、薬剤の名前をクリックしてください。(別ページにて解説)

 

SU薬
低血糖を起こしやすいため、第4選択以降として最少量から使用されます。高齢者や腎機能が低下した方では、3~4日遷延する重篤な低血糖、死亡例、遷延性意識障害例が多数報告されています。

 

グリベンクラミド(商品名:オイグルコンなど)は最も強力であるため、高齢者には使用しないように推奨されています。SU薬を使用する場合、グリクラジド(商品名:グリミクロンなど)、グリメピリド(商品名:アマリールなど)を最少量から開始します。

 

食事を食べられない時には、低血糖のリスクが増えるので、薬を飲まないようにすべきです。このため、薬を一包化する場合には、どれがSU薬なのか判別できるよう状況が望まれます。(近くの薬局・薬剤師に相談してください。)

 

チアゾリジン薬
ピオグリタゾン(商品名:アクトスなど)が代表的な薬剤です。心不全のある方には使えない(禁忌)だけでなく、浮腫(むくみ)が起こりやすいため注意が必要です。浮腫は女性に多く(約12%)、さらに骨折のリスクが増加します。使用開始後、6ヶ月以内は体重の増加に注意しましょう。

 

ビグアナイド薬
代表的な薬剤であるメトホルミン(商品名:メトグルコなど)は、禁忌でない方には第一選択となります。腎機能の悪化、胃腸障害(下痢、悪心)に注意が必要です。中等度以上の腎機能障害、重度の肝機能障害、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等心血管系、肺機能に高度の障害のある方、過度のアルコール摂取者、脱水症の方には使用できません(禁忌)。

 

αグルコシダーゼ阻害薬
腹部膨満、下痢、便秘、おなら放屁(オナラ)などが起こりやすく、途中で服薬を断念する方がいます。大腸の手術をした既往がある方には、イレウスの危険があるため使用できません(禁忌)。稀に重篤な肝機能障害を起こすことがあります。使用開始後6ヶ月は肝機能検査の必要があります。

 

速効型インスリン分泌促進薬
グリニド薬とも呼ばれます。種類によっては、低血糖に注意が必要です。

 

DPP-4阻害薬
胃腸障害(主に便秘)を起こすことがあります。膵炎、膵がんの発症が懸念されましたが、現時点(2017年5月)では有意な増加はないとされます。稀ですが、関節痛・関節炎の報告があります。関節リウマチの発症や増悪の報告もあり、自己免疫疾患がある方は使用を避けたほうがいいと考えられています。

 

SGLT2阻害薬
2014年4月に発売されたばかりの新しい作用機序の薬です。そのため、長期間使用した際の安全性が不明で、漫然と飲み続けるべきではありません。尿路感染症、性器感染症、脱水、皮疹、ケトアシドーシス、脳梗塞等に注意が必要です。腎機能低下者、高齢者、やせ型の患者には使用すべきではありません。肥満型で腎機能が正常な若者から中年までの患者に使用すべきと言われます。

 

 

経口薬選択の注意点
HbA1cの目標は、原則7.0%未満(高齢者以外)とし、同じ薬で3ヶ月経過をみることが通常です。それでもHbA1cが8.0%以上が続く場合には、薬の追加や変更を検討します。

 

薬を併用する場合は、3種類までにとどめるべきと考えられています。(シックデイ時の安全管理、服薬アドヒアランス、医療費の面から)

 

多剤を併用していてもHbA1cが8.0%以上続く状況は良くありません。そして、インスリン導入を先延ばしにすることは慎むべきだとされます。

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