糖尿病治療のポイント
医療者の大前提として、チーム医療が重要です。患者本人と医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、検査技師が連携しながら治療を行います。
診療から治療までの大まかな流れ
①まず、インスリンが必要な状態か(依存状態か非依存状態か)の判断を行う。
②続いて、治療の緊急性の判断を行う。糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧性高血糖症候群、感染症を併発している場合、緊急手術が必要な場合には、急いで血糖値を改善する必要がある。これら以外の場合は、数ヶ月かけて徐々に血糖値を改善させる。
③血糖降下薬を使用する場合、原則として単独では低血糖をきたさない薬を少量から開始する。
④必ず早期に眼科受診をしてもらう。
⑤血糖コントロールだけでなく、血圧と脂質のコントロール、体重管理、禁煙指導もあわせて実施する。
⑥高齢者の血糖コントロールは、高齢者の血糖コントロール目標に従う。低血糖を避けるように治療する。
⑦血糖コントロール悪化は、食生活の乱れ、精神的ストレス(不眠、うつなど)、がんも原因となる、急激に血糖コントロールが悪化した患者はがん(特にすい臓がん)を疑う。その場合、腹部エコーを実施するなど、早期に検査を行う。
⑧運動療法は基本となるが、次の場合には運動療法を禁止とする。
- 顕著な高血糖(空腹時血糖値が250mg/dL以上)である場合
- 増殖性網膜症による新鮮な眼底出血がある場合
- 腎不全、虚血性心疾患、急性感染症、骨・関節疾患、糖尿病壊疽がある場合
血糖降下薬の第一選択はメトホルミン(2型糖尿病)
糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。それでも血糖値が改善しない場合に、薬の使用を検討します。
日本では、次の系統の薬が使用されています。
- ビグアナイド薬
- DPP-4阻害薬
- SGLT2阻害薬
- スルホニル尿素薬(SU薬)
- 速効型インスリン分泌促進薬
- チアゾリジン薬
- α-グルコシダーゼ阻害薬
- インスリン
この中で、どの薬を一番に使用するべきのか、「糖尿病治療ガイド2016−2017」、「糖尿病診療ガイドライン2016」には、具体的な記載はありません。
血糖降下薬は「合併症抑制のエビデンス、病態に応じた作用機序、禁忌でないことなどを考慮して選択し、患者への説明と同意のもとに開始すべき」とされます。
また、ADA、EASD(欧州糖尿病協会)による共同声明では、「禁忌でない限り第一選択薬はメトホルミンである」と明記されています。(2015年)
国立国際医療研究センター病院による「糖尿病標準深慮マニュアル」では、血管合併症のエビデンスの面から、「第一選択薬はメトホルミン、第二選択薬はSU薬(グリクラジド、グリメピリド)、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬のいずれか」と記載されています。
以上より、日本人でも「禁忌でない場合、メトホルミンが第一選択薬」と位置づけられています。
メトホルミン(商品名:メトグルコ)の特徴
主な作用は、肝臓にて糖を作らないようにする「糖新生の抑制作用」です。末梢にてインスリンの感受性を増強する作用もあります。単独では低血糖をおこしにくく、体重を増加させにくい特徴があります。
通常、1日750mg~1,500mgを1日2~3回に分けて服用します。主な副作用として、下痢、吐き気、発疹、かゆみ、食欲不振、腹痛などが報告されています。
また、稀ですが次のような症状が起こった場合には、使用を中止するべきです。
- 乳酸アシドーシス:むかつき、嘔吐、だるさ、筋肉痛
- 低血糖:脱力感、空腹感、発汗
- 肝機能障害:全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる
- 横紋筋融解症:手足の筋肉の痛み、こわばり、しびれ
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