2型糖尿病治療の最新情報(糖尿病の進行)
2型糖尿病治療の最新情報について、河盛隆造先生の講演「2型糖尿病治療の目指すところは」を参考にまとめを行います。
以下、2型糖尿病治療の最新情報(糖とインスリン)のつづきの内容です。
【高血糖毒性と糖尿病の進行】
一般的に、高血糖(血糖値が高い状態)がさらなる高血糖を呼ぶ悪循環を「糖毒性」といいます。
しかし、この呼び名は、糖が悪者に思われるため「高血糖毒性」と呼んでいただきたい。
糖尿病の方は、治療が進むにつれて薬の量が増え、インスリンを導入し、そのインスリン量もどんどん増え、腎機能が落ちていく経過をたどることが多いです。
早期に糖尿病であると診断されていても、患者さんが治療を受けないと、このような悪い経過をたどります。
つまり、医師や患者さん自身が、糖尿病を放置せず、糖尿病に真摯に向き合うことが大切です。
わずかでも、高血糖を放置することは、非常に危険なことなのです。
時代は進歩しており、瞬時に血糖値やHbA1cを測ることができます。
多くの患者さんが、自身の血糖コントロールを知っている時代になっています。
そして、自己血糖測定器などの普及によって、多くの方が「より良い血糖のコントロール」を行うことが望まれます。
糖尿病は、代償期、代償不能期、進行期と進行しますが、進行期になってから病院に来ることは、非常に残念なことです。
一度悪化してしまうと、後戻りできない危険があります。
【インスリンとオートファジー】
細胞内で作られた異常なタンパク質や傷ついた細胞小器官はオートファジー(細胞の自食作用)によって速やかに分解、リサイクルされ、これにより生体の恒常性が維持されています。
心筋のオートファジーの異常は心不全を、肝細胞のオートファジーの異常は肝がんなど、オートファジーの異常は様々な病気を引き起こすとされています。
膵β細胞は、オートファジーを高めることによって「インスリン抵抗性を代償」しています。
膵β細胞は、インスリン抵抗性があると、オートファジーをフル回転させて、膵β細胞を維持します。
このプロセスがあるため糖尿病にならなくてすんでいます。
しかし、この状態を放置していると、膵臓のβ細胞はどんどんつぶれてしまいます。
メトホルミン(糖尿病の治療薬のひとつ)を使っている方は、インスリン分泌が長持ちすることが知られています。
これは、メトホルミンがオートファジー機構を正常化させているためではないかと考えられています。
【インスリンとZnT8】
インスリンは膵臓でつくられ、亜鉛を中心に六量体(6つが合わさったかたち)としてからだの中に存在しています。
膵臓がインスリンをつくる際、亜鉛をくみいれる「ZnT8(ジンクトランスポーターエイト)」というタンパク質が必要です。このZnT8が、非常に重要な働きをしているのです。
通常、インスリンは肝臓で分解されますが、亜鉛があることによって分解されにくくなっています。
しかし、動物を高血糖にすると、ZnT8の活性がみるみる低下していきます。
そして、インスリンに亜鉛をくみいれにくくなり、肝臓で分解されやすいインスリンができてしまいます。
つまり、高血糖が続くと、亜鉛の少ないインスリンが作られ、肝臓でインスリンが分解されやすくなります。
そして、末梢組織へのインスリン供給が減少し血糖値上昇をひきおこしてしまいます。
高血糖がさらなる高血糖を呼ぶという、悪循環をつくってしまうのです。
わずかかなインスリン抵抗性や食後過血糖の放置が、取り返しのつかない異常を惹起するのです。
つづきは、2型糖尿病治療の最新情報(高血糖の害)です。
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