薬局薬剤師の「在宅患者訪問薬剤管理指導」と「居宅療養管理指導」

【在宅患者訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の概要】
在宅患者訪問薬剤管理指導居宅療養管理指導は、療養に必要な管理指導を行うサービスの名称です。どちらも医師の指示のもと、通院困難な患者さん(病院にひとりで通えない方等)に対して訪問し、薬の管理や指導を行います。行うべき指導内容は以下のとおりです。

 

通常(在宅医療以外)も実施すべき事項

  • 氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・緊急時の連絡先等の確認
  • 処方した保険医療機関名・保険医氏名・処方日・処方内容の確認
  • 調剤日・疑義照会など、調剤についての記録
  • 患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の記録
  • 患者または、その家族等からの相談事項の要点の確認
  • 薬の服薬状況の確認
  • 残薬の状況の確認
  • 患者の服薬中の体調の変化の確認
  • 併用薬等(一般用医薬品や健康食品など)の情報の確認
  • 合併症を含む既往歴(現在の病気)の情報の確認
  • 他科受診の有無の確認
  • 副作用が疑われる症状の有無の確認
  • 飲食物(現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているものに限る)の摂取状況等の確認
  • 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用に関する患者の意向の確認
  • お薬手帳による情報提供の状況確認
  • 服薬指導の要点の記録
  • 指導した保険薬剤師の氏名の記録

 

在宅医療において実施すべき事項

  • 訪問の実施日、訪問した薬剤師の氏名の記録
  • 処方医から提供された情報の要点の記録
  • 訪問に際して実施した薬学的管理指導の内容(薬剤の保管状況、服薬状況、残薬状況、併用薬剤、投薬後の併診、副作用、重複服用、相互作用の確認等)の記録
  • 訪問時の指導の要点の記録
  • 処方医に対して提供した訪問結果に関する情報の要点の記録
  • 処方医以外の医療関係職種(ケアマネや訪問看護師等)との間で情報を共有している場合は、医療関係職種から提供された情報の要点及び医療関係職種に提供した訪問結果に関する情報の要点の記録
  • サポート薬局(提携している薬局)が実施した場合は、訪問薬剤管理指導を行ったサポート薬局名、当該訪問薬剤管理指導を行った日付・やむを得ない事由等の記録

在宅患者訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導とお金(平成30年年4月以降)

薬局は保険による収入によって運営されています。在宅医療を行なう際、在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険)と居宅療養管理指導費(介護保険)という点数のどちらかを算定します。以下、基本的な項目のみ記載しています。

 

随時、変更点を更新していく予定です。(以下編集中、平成30年2月12日現時点での情報)

 

 

医療保険
在宅患者訪問薬剤管理指導料

介護保険
居宅療養管理指導費

点数(料金)

1 単一建物診療患者が1人の場合:650点
2 単一建物診療患者が2~9人の場合:320点
3 1及び2以外の場合:290点

 

[単一建物診療患者の人数]
当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険医療機関が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者(当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関にお
いて算定するものを含む。以下同じ。)の人数を「単一建物診療患者の人数」という。

 

ただし、当該建築物において当該保険医療機関が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が、当該建築物の戸数の 10%以下の場合又は当該建築物の戸数が 20戸未満
であって、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が2人以下の場合には、それぞれ単一建物診療患者が1人であるものとみなす。

単一建物居住者の人数
1人:507単位
2~9人:376単位
10人以上:344単位

 

特別地域居宅介護支援加算:所定単位数の100分の15に相当する単位/月

 

中山間地域等における小規模事業所加算:所定単位数の100分の10に相当する単位/月

 

中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算:所定単位数の100分の5に相当する単位/月

算定できる回数

月4回
6日以上の間隔をあけること、以下の場合を除く
(がん末期の患者さんや、中心静脈栄養法の対象者については週2回かつ月8回まで)

月4回
6日以上の間隔をあけること、以下の場合を除く
(がん末期の患者さんや、中心静脈栄養法の対象者については週2回かつ月8回まで)

条件

保険薬剤師1人につき1週間当たり40回まで
薬局と患家(患者の家)との距離が16km以内

 
麻薬管理指導加算等 100点(1回につき)を加算 100単位(1回につき)を加算

 

患者さんが介護保険の認定を受けている場合は、居宅療養管理指導(介護保険)が優先となり、医療保険ではなく介護保険を使用します。(介護保険優先の原則)また、これらの管理指導料は、報酬改定の時期によって点数(値段)が異なる場合があります。

 

患者さんが介護認定を受けていない場合は、在宅患者訪問薬剤管理指導となり医療保険での請求を行います。上記の料金は、点=10円、単位=約10円(※)です。例えば、1割負担の方で、在宅患者訪問薬剤管理指導料(同一建物居住者以外の利用者)を算定する場合650円をいただきます。

 

※円に換算する場合、地域とサービスによって料金が異なる場合があります。

 

 

緊急訪問を評価した点数(医療保険)
訪問指導を実施している保険薬局の薬剤師が、患者さんの急変時に在宅で行う場合の点数があります。通常訪問している疾病の急変で訪問した場合には「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(月4回)500点」を算定します。

 

通常訪問している疾病の急変時に、主治医の指示により、薬剤師、歯科医師、訪問看護師、ケアマネージャー等が共同でカンファレンスを行った場合には「在宅患者緊急時等共同指導料(月2回)700点」を算定します。

 

 

疑義照会を評価した点数(医療保険)
医師の処方内容に対して、薬剤師が疑義照会を行い処方が変更になった場合に「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料30点」を算定します。残薬、重複投薬(同じような効果の薬が処方されている場合)、薬や食べ物の相互作用がある場合に疑義照会が行われます。
(医師の処方忘れの場合には、算定できません)

 

 

退院時カンファレンス参加の点数(医療保険)
入院中の患者について、退院後の訪問管理指導を担う保険薬局として病院でのカンファレンスに参加する場合、「退院時共同指導料(入院中1回)600点」を算定します。ちなみに、退院後、特養・老健などに入る患者さんには算定できません。

 

 

訪問実績が問われる点数(医療保険)
在宅業務に十分に対応している薬局(一定以上の過去の実績※などを考慮)が居宅療養管理指導費等を算定している患者に調剤を行った場合に「在宅患者調剤加算(調剤料の加算として)15点」を算定します。
※過去1年間の実績:在宅患者に対する訪問服薬指導の算定回数が直近の1年間で10回以上(平成28年4月現在)

 

 

【在宅患者訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の比較】

  在宅患者訪問薬剤管理指導料 居宅療養管理指導費
対象者 通院が困難で医師が必要と認めた患者 要介護(支援)認定を受けている者でかつ通院が困難で医師が必要と認めた患者
利用者の同意

患者の同意を得ることが望ましい
 (文書等は報酬算定上、必須ではない)

文書による利用者への説明と同意
(重要事項説明書と契約書が必要)

事業者指定 地方厚生局への届出しなければならない 保険薬局であれば「みなし指定」されている
訪問後の報告 医師に文書で報告 医師・ケアマネジャーに文書で報告
訪問可能な患家との距離 16キロメートル以内  
薬局内の掲示 訪問薬剤管理指導を実施している旨の掲示 運営規定の概要、勤務体制等を掲示
会計区別   他の事業会計と区別(領収書必須)
管理指導に関する記録の保存 最終記録の日から3年 完結の日から2年  ※1
算定条件 医師等の指示に基づき、在宅患者訪問薬剤管理指導計画書を作成し、薬剤管理指導業務を行った場合に算定可能 医師等の指示に基づき、居宅療養管理指導計画書を作成し、居宅療養管理指導を行った場合に算定可能
請求先

調剤報酬(薬剤料など)と併せて被保険者
の加入保険へ請求

国保連合会介護保険係
調剤報酬(薬剤料など)は被保険者の加
入保険へ請求

公費 ※2 生活保護者の場合は市役所もしくは福祉事 務所に「調剤券」を請求する 生活保護者の場合は市役所もしくは福祉事務所に「介護券」を請求する

※1 市町村条例により行政区独自の基準を設けている場合がある。(例:サービス提供の日から5年間の保存)
※2 地域によって介護券及び調剤券の入手方法が異なる。各市町村の福祉事務所へ確認が必要。

 

 

【薬剤師じゃなくても薬がわかる本】

 

 

 

 

 

 


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