心電図と第Ⅱ誘導
心電図は、心臓における興奮(電気刺激)の発生や、興奮が伝わる過程での異常(不整脈等)を見つけることができます。
洞結節の興奮は、洞結節自身が小さな組織のため、心電図上には現れません。洞結節の興奮が伝わる先である心房筋の収縮は、心電図の波形として見ることができます。また、ヒス束・脚・プルキンエ線維の興奮も小さく、波形として見ることはできません。
一般的に、心臓の病気(不整脈や狭心症等)が、起こっている状態でないと、心電図に波形として異常が現れません。逆に、不整脈が起こっているのに心電図上に現れない場合もあります。心房の興奮により現れる「丸い波形」をP波といいます。
第二誘導の心電図
出典:不整脈の読み方
P波:心房筋が興奮するとP波が現れます。つまり、心房が縮している時間を示します。
PQ間隔:PからQまでの間は、「心房の興奮」から「心室筋の興奮の始まり」までを示します。その大部分は、房室結節を伝わる時間(房室伝導時間)です。ヒス束・脚・プルキンエ線維の興奮は、PQ間隔のフラットな(山のない)部分に当たります。
房室結節で興奮の伝わり方に異常があると、PQ間隔が延長します。
出典:不整脈の読み方
QRS波:心室が興奮を始めてから、その興奮が心室内を伝わっている間を示します。このQRSの幅が広いと、興奮の伝わり方(電気刺激の伝達)が正常でないと考えられます。
脚ブロック:脚のどこかで伝導がスムーズに伝わらないと、その伝導が受け持つ部位には違う経路から刺激がやってきて遅い収縮となります。その結果、心室全体が興奮するには時間がかかりQRSの幅が広くなります。
右心室の異常興奮:右心室の細胞の異常興奮が起こると、その興奮は遅れて左心室にも伝わります。その場合も心室での伝導時間が長くなり、QRSの幅は広くなります。
ST:心室が収縮し始めてから、心室全体が興奮している間を示します。心室筋が一様に脱分極しているため、心電図には何もあらわれません。心筋虚血(心筋梗塞等)が起こると、障害電流が発生し、STの上昇・下降などがみられます。
T波:心室筋の興奮が終わり、興奮の前段階である「再分極」を示します。心臓の収縮は終わり、拡張している状態です。心室筋に異常があると波形が逆転する場合もあります。
異常を見つけるためには「正常心臓」の心電図をしっかり知っておくことが大事です。波形が「どのような形か?狂いは無いか?それらの間隔に異常はないか?」。それらを見ることにより心臓の動きの診断をするのが、心電図なのです。しかし、心臓の異常のすべてが心電図でわかるわけではありません。
心電図をみるための予習
洞結節がお休み(興奮できない状態)した場合、房室結節が興奮の起点となります。下の図は、心臓の各部位に刺激を伝え、それによって各部位が興奮したときの波形の3事例です。房室結節での伝導には時間がかかります。
出典:不整脈の読み方
房室結節の上部を起点にして予備の興奮が起こると、P派、QRSの位置は正常と同じです。しかし、心房での電流は下から上への伝導となりP波の波形は下向きで逆転しています。
房室結節の中間から興奮が起こった場合、P波は逆転します。この際、心房の収縮と心室の収縮が同時のため、P波はQRSの中に飲み込まれてしまいます。つまり、心電図上、P派を観察することはできません。
下部から興奮が起こると、QRS群の後にP波が現れます。この際、房室結節での伝導が遅いため、近い心室が先に収縮します。その後、心房が収縮します。
続いて、心臓の不整な動きを考える