電解質の異常と心臓の機能

心臓の動きには、電解質(Caイオン、Naイオン、Kイオン)の調和が非常に重要です。電解質が心臓の細胞に出入りすることで、電気刺激(電位差)が生まれ、心臓は収縮することができます。つまり、電解質の量が異常だと、電気刺激を発生させられず、心臓は動けなくなってしまいます。

 

身体の中のカリウム(Kイオン)が多くなる「高カリウム血症」、カリウムが少なくなる「低カリウム血症」のどちらにおいても、心臓(心電図)に異常が起こります。中心にある、正常な心電図を参考にご覧ください。

 


出典:心筋細胞の電気生理学(QRSTを追加)

 

正常な心室の活動電位

 

細胞内にNaイオン、Caイオンが入ることで、細胞内の電位が上がります。
細胞外にKイオンが出ることで、細胞内の電位は下がります。

低カリウム血症

身体の中にKイオンが少ない(低カリウム血症)場合、心室の細胞がどうなるのか例を考えてみましょう。

 

例)身体にNaイオン、Caイオンは異常なく、Kイオンが少ない状態。正常なKイオンの量は細胞外に5、細胞内に150。そして、電位差と濃度差でうまく分極(均衡が取れて安定)し、電位差が-90mVで落ち着いているとします。

 

低カリウム血症の場合、細胞外のKイオンの量が5あるべきなのに、4しかない状態です。このとき、細胞内外の電位差が大きくなります。細胞外と細胞内の電荷のバランスをとるために、細胞内のKイオンが150よりも少なくなければ釣り合いがとれません。

 

つまり、細胞外へKイオンが出て行きづらくなり、心電図がのびたようなかたちになります。長い時間Caイオンが細胞の内にいることで、心室が収縮を続けている状態です。この状態は心電図上、QT延長とよばれ、T波が後ろにのびてみえます。

 


出典:心筋細胞の電気生理学

高カリウム血症

高カリウム血症は、低カリウム血症の逆の状態です。適切に治療を行わないと、短時間のうちに命を失いかねない場合があります。

 

細胞外のKイオンが多いので、細胞内にもKイオンが多くなります。つまり、細胞内がよりプラスの状態で、プラスのNaイオンは細胞内に入りづらく、電気刺激が発生しづらい状態です。一方、Kイオンは外に出ていきやすい状態で、心室の収縮時間は短くなります。

 


出典:心筋細胞の電気生理学

 

心電図では、T波が幅が狭く尖って大きくなり、PQ間隔延長,QRS幅の延長を認める場合があります。

高カルシウム血症

通常、細胞外にはCaイオンが多く存在します。高カルシウム血症では、Caイオンがさらに多くなり、細胞内にCaイオンが入り込みやすい状態です。このCaイオンの流入は急速であり、(心室の)収縮は短くなります。心電図では、STが短縮します。

 

一方、低カルシウム血症では、Caイオンの流入に時間がかかり、収縮が弱くなります。心電図では、STが延長します。

QTの延長

心電図におけるQTの間隔は、心室筋の活動している持続時間にあたります。この時間が延長した病態のことを「QT延長症候群」といいます。

 

低カリウム血症では、心室の収縮期間が延び、T波の出現が遅れQTが延長します。低カルシウム血症でもSTがのびる結果、T波自体が後ろに移動し、やはりQT延長が生じます。KイオンもCaイオンも濃度が低下するとQTの延長が起こるので危険性が高まります。

 

また、低マグネシウム血症、薬剤が原因でQT延長が起こる場合があります。女性では性ホルモンが心筋のイオンチャネルに影響し、QT延長を起こしやすいといわれています。

 

QT延長は、周囲の細胞に刺激を与えることになり、心室性の頻拍につながる可能性があります。それは心室細動に移行しやすい危険な不整脈なのです。

 

 

続いて、不整脈のいろいろ・上室

 

 

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