不整脈のいろいろ・上室
上室性の不整脈は、発作性上室性頻拍、心房細動、心房粗動、期外収縮、心室頻脈、脚ブロックが代表的です。心臓の細胞にちょっと異常があると、おかしな動き(不整脈)が起こることがあります。心臓の細胞は機械ではありませんので、間違いや異常を頻繁に起こすのです。
上室性の不整脈
上室性の不整脈とは、房室結節より上部に起こる不整脈です。上室性頻拍、心房細動、心房粗動、WPWなどがありますが、その大半はカテーテルアブレーション(心臓の細胞を焼く手術)で治療されます。短時間で自然と静まる場合もありますが、薬で対応すべき場合もあります。慢性的になるとカテーテルアブレーションの治療でも難しいといわれています。
【上室性頻拍】
頻拍とは、心臓のリズムが異常に多い状態です。房室結節内に起こっているリエントリーが、上室性頻拍の主な原因だと考えられています。下図において、心房の収縮のP波は心室の収縮と同時になるため、心電図にはあらわれません(隠れています)。
また、副伝導路(ケント束・奇形)がある場合には、副伝導路と房室結節の間でのリエントリー(回転路)が生じる場合があります。
しかし、この発作性上室性頻拍は器質的心疾患の無い健常者によくみられる不整脈です。心臓に何も異常がありませんが、不整な動きを起こすのです。つまり、心臓の構造が作り出した不整脈と言えるでしょう。
出典:高知大学、土居忠文先生の資料「イラストで読む心電図」
【心房細動】
f波(細動波)とよばれる無秩序な小さい興奮(350~600回/分の振動)が起こります。心房の振動は規則的な動きではなく、心房の収縮は困難になります。年齢と共に心房細動の発生頻度は増します。しかし、心房細動そのものは重大な病気ではありません。(心房細動で発生する血栓には注意が必要です。)
心房細動は1週間以内に消失する発作性心房細動、1年未満ぐらい持続する持続性心房細動、1年以上持続する慢性心房細動に分類されます。
心房細動の原因は様々で、どのような電解質の異常なのか、はっきり解明されていません。肺静脈の入口の細胞に自動能があり、呼吸器の疾患などによって、その部位が異常興奮を起こし心房細動が発生する場合もあります。
出典:高知大学、土居忠文先生の資料「イラストで読む心電図」
上図の心電図は、第Ⅱ誘導でないため、QRSが下向き(よく見る心電図の逆向き)になっています。P波はあらわれません。
【心房粗動】
心房細動よりも大きなF波(粗動波)とよばれる興奮が起こります。心房細動に比べるとまれな不整脈です。主な原因は、心房内を大きく回るリエントリーであり、心房が収縮するP波はあらわれません。心房から心室への電気刺激は、規則的に「4対1」もしくは「2対1」で伝わります。
心室の収縮が極端に増え、心室頻脈が起こると突然死の危険性が生じます。心房細動と同様に、血栓ができる可能性もあります。慢性閉塞性肺疾患、弁膜症、虚血性心筋症など基礎疾患がある場合に起こりやすい不整脈といわれます。
出典:高知大学、土居忠文先生の資料「イラストで読む心電図」
【心房性期外収縮】
洞結節からの電気刺激が来る前に異常興奮を起こし発生する不整脈です。心房の細胞の中の障害細胞などが原因で、正常な電位差を作れない場合に起こります。単発で起こった場合の危険性は少なく、何か基礎疾患がある場合には注意が必要です。
出典:高知大学、土居忠文先生の資料「イラストで読む心電図」
さまざまな上室性不整脈の原因の概略図
出典:不整脈の読み方
続いて、不整脈のいろいろ・心室など