心筋のリモデリングとは

リモデリングとは、一般的に「つくり直すこと」をさします。医学の分野では、細胞のつくり直しによって、臓器が分厚くなっていく状態をさすことが多いです。そして、心不全に関係する高血圧や弁膜症など、心臓へのあらゆる負荷に対して、心臓の機能に変化が起こることを「心臓リモデリング」といいます。

 

これは負荷に対する“適応現象”なのですが、適応すると同時に「負の側面(心臓が弱る)」を併せ持ちます。つまり、リモデリングは矛盾したシステムなのです。

 

心筋細胞の肥大と線維化は何故起こるのか?
心筋細胞は、ひとつひとつの細胞が大きくなることにより成長します。そして、細胞内ではタンパク合成が盛んになり、少ないエネルギーでも収縮が可能になります。生理的な負荷や、運動、成長、妊娠などによる肥大であり、「生理的心肥大」と呼びます。

 

生理的心肥大は、心臓の成長に欠かせません。しかし、心臓は成長後もさまざまな刺激に対して「病的心肥大」という形をとることもあります。この病的心肥大は、心不全の予後を悪化させる最も重要な因子の一つだといわれています。

 

心筋細胞の間にある細胞間質には、繊維芽細胞、血管、交感神経、細胞外基質などが存在します。細胞間質の大部分は繊維芽細胞であり、これがコラーゲンをはじめとする細胞外基質をつくる役割をしています。細胞外基質の主要なものは、線維性コラーゲンの網目構造です。このコラーゲンの網により心筋細胞は支持され相互に固定されています。

 

また、局所の神経内分泌ホルモン(アンジオテンシンⅡ、アルドステロンなど)やサイトカイン(TNF-α)などによって繊維芽細胞が集まり増殖しコラーゲン線維となります。繊維芽細胞の一部は機械的ストレスや神経体液性因子の活性化により硬い筋繊維芽細胞に変わっていきます。

 

この細胞は心筋の損傷部位に集まり、種々のサイトカイン、成長因子などを出し、心筋の線維化・肥大に関係します。この線維化は心筋細胞の壊死・アポトーシスなどによる欠落した穴を埋めたりします。心筋線維化の進行は、心筋の拡張障害、収縮の低下、また冠動脈の予備軍作成の低下に関係し虚血などを引き起こします。

 

心臓を働かす命令には、カテコラミン、アンジオテンシンⅡ、サイトカイン、ホルモンなど様々なものが関係しています。

出典:標準循環器病学

 

心筋障害の初期段階では、心筋細胞が肥大し心筋への圧を軽減させます。また、線維化を起こし、心臓の補強を行います。そして、心室は(心室へ)流れ込む血液量を増やすように拡張し、心室の張力を増加させます。

 

つまり、線維化は心筋の収縮性を強力にし、心臓から送り出す血液の量を保とうとします。心肥大や線維化は強い収縮を保つ為には重要なことです。しかし、病的でもあり、いずれも早期に「心臓の拡張障害」を招きます。

 

このように、心室のサイズ、形や壁厚の変化を心筋リモデリングといいます。この心筋“リモデリング”は、心室の構造や機能に対して、徐々に「悪い変化」を起こしていくのです。この心筋の変化に関係するのが、神経活動の活性化、特に交感神経やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)です。

 

心臓は、心臓としての役目を果たすために姿を変えていきます。働きの悪い細胞が殺され、残っている細胞は細く伸び拡がり、固くなり、回りには線維を増やし、心臓として機能を果たそうとします。しかし、それは心臓の弱体化に向かっているのです。

電気的リモデリング

部分的に虚血が起こると、細胞内のミトコンドリアでのエネルギーの産生能力の低下、Caイオンの移動がスムーズにいかない、ギャップ結合での伝導が上手くない、深い電位がつくれないなど、さまざまなことが起こります。また、各イオンチャネルの産生低下が生じます。これらを電気的リモデリングといいます。

 

この状態では、心筋細胞が機能不全の状態に近づきつつあります。心不全の心筋では、細胞死の一つであるアポトーシスが健常人に比べて50~100倍多く認められます。

 

壊死した心筋組織などを免疫細胞が認識すると、好中球や他のリンパ球が浸潤しサイトカインを放出し、さらに炎症性細胞を局所に動員し炎症が生じます。また、障害タンパクに対する「自己の抗体」がつくられることもあります。

 

障害で死ぬ細胞や、免疫細胞で殺されるものもあり、炎症・免疫反応が心不全の病態にも大きく関係しています。これら全てが心筋リモデリングの一連だと考えられます。

心不全における負荷

前負荷
静脈から心臓に返る血液は心筋に圧力をかけ、その力で心室は拡がります。この圧が前負荷であり、心臓の拡張期の容積を決める心筋に対する大事な圧力です。

 

心臓や肺に何らかの障害が起こると、血液はうまく流れ込むことができなくなります。そして、血液が左心室や肺にたまるようになり、全身から返ってくる静脈血と重なり右心房・右心室の心筋のポンプに過剰な(血液による)圧力がかかります。これが前負荷の過剰状態です。

 

後負荷
心臓にかかる末梢血管抵抗(血圧)の負担が後負荷です。後負荷は心臓が収縮時に必要とする力(負荷)で、それを増大するものは主に血圧(血管抵抗)です。

 

 

続いて、心臓の収縮と拡張|心臓と心不全

 

 

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