心不全に関連する病気

心筋梗塞
人間の心臓の周りには、心臓自身へ酸素等を運ぶ役割をする血管、冠動脈が流れています。冠動脈が詰まって(梗塞し)血流が途絶えると、心臓の組織の一部が壊れて死んでしまいます。その状態を「心筋梗塞」といい、ほとんどの場合、突然の激しい胸の痛みとともに発症します。(梗塞が発症後、約6時間で心筋細胞は壊死します)

 

心筋梗塞が起こると、心筋は硬く固まり、拡がることも収縮することできなくなります。そして、心臓の他の部分(梗塞以外の部分)に過剰な負担がかかります。梗塞の深さや広さによって、心不全の病態はさまざまです。

 

心臓の収縮に関わる刺激伝導系関連の梗塞では、伝導のブロックを起こし急性心不全となり急死することもあります。また、広域の心筋に梗塞が起こると、心筋の壊死が生じ収縮力を失い、血液不足によってショック死が起こります。

 

梗塞が繰り返し起こると、心臓のポンプ機能が低下し、心臓に血液がたまった状態(うっ血性心不全)につながります。急性心筋梗塞で死を逃れても、年月とともに梗塞巣の線維化や、残っている心筋の肥大、左心室径の拡大など(心筋リモデリング)が生じ、心不全の悪化が起こります。

 

梗塞部位のある心臓の収縮期・拡張期

 


出典:心不全と付き合うコツ

 

心筋梗塞では、心筋リモデリングが進行し、左心室壁へのストレスが増えます。このとき、RAA系や交感神経系は亢進しています。また、その周辺の細胞から出されるサイトカインなどによって、さまざまな神経体液性因子(自律神経・RAA系など)はさらに活性化していきます。

 

その結果、心筋リモデリングは心筋の硬化などと共にポンプ機能を壊します。そして、心臓は虚血性心不全になり、弱体化していきます。これは弱った心臓に、補強・応援してやるから死ぬまで頑張れと言っているようなものです。

 

 

肥大型心筋症と拡張型心筋症

出典:不全と向き合うコツ

 

左心室や心室中隔の心筋に異常が起こると、不均一な心肥大が生じることがあります。心室壁が厚くなり、拡張期のふくらみが減るという特徴があります。左心室の空間は狭くなりますが、心筋の収縮力はあるため、ポンプ機能はなんとか保たれます。しかし、肥大が進行すると、刺激伝導系も障害を受け不整脈の原因になりやすいのです。このため初期の心不全状態での急死は、刺激伝導系の障害が大半を占めます。

 

 

拡張型心筋症
双方の心室が拡張し、心筋がうすく延び、収縮がうまく機能しない状態です。心臓内部の空間が大きくなります。拍出やポンプ機能が弱り、うっ血性心不全の病態になります。(上図右)中年の男性に多く、肥大型心筋症と同様に不整脈などによる急死が多いです。予後は不良で5年生存率は約50%といわれています。

 

 

拘束型心筋症
心内膜の心筋が線維化し硬く心室の拡張が困難で、なんとか収縮ができている状態です。病気が進行すると心不全、不整脈、塞栓症を起こします。特発性心筋症調査研究班による診断の手引きによると、以下のように定義されています。

 

①硬い左心室
②左室拡大や肥大の欠如
③正常または正常に近い左室収縮能
④基礎疾患が不明

 

続いて、心室への負荷とその病態|心臓と心不全

 

 

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