心臓が機能を失う仕組み

心不全の主な病態は、心筋の機能が失われることであり、心筋細胞そのものが収縮できなくなります。心不全を引き起こす「仕組み」は種々あります。心筋細胞のアポトーシスや、異常な遺伝子の発現、細胞の肥大・線維化など、心臓にさまざまな変化が起こります。

 

心不全の病態は、「心臓のポンプ機能が低下して末端に血液が送れなくなったものだ」と簡単に言うことはできません。心筋の機能は徐々に失われていきますが、合併する疾患によって「進行の速度や重症度」はさまざまです。

心筋の細胞死

心筋梗塞は心筋の壊死(ネクローシス)が起こります。この壊死は、心筋細胞死による「心臓が機能を失う」典型です。また、拡張型心筋症や高血圧性心疾患などによっても壊死が起こります。心臓の細胞は色々な原因で死んでいきます。

 

壊死・ネクローシス(necrosis)
虚血や外傷など、細胞外の環境の悪化による細胞死です。生物の組織の一部分が死んでいく様、または死んだ細胞の痕跡のことをさします。最終的には細胞膜が破綻して周囲に炎症を引き起こします。

 

アポトーシス (apoptosis)
管理・調節(プログラム)された細胞の自殺です。不要な細胞や障害細胞などを除去するなど、身体をより良い状態に保つために引き起こされます。ネクローシスの対義語として使われる事が多いようです。

 

オートファジー (Autophagy)
細胞内のタンパク質をアミノ酸へ分解するための仕組みのひとつです。栄養状態が悪化したときに、タンパク質の再利用が行われたりします。自食(じしょく)とも呼ばれ、生体の恒常性維持に関与していると考えられています。拡張型心筋症や弁膜症の心筋では、オートファジーがアポトーシス以上の高頻度でみられるようです。

心筋のカルシウム調節異常

心不全では、拡張期に筋小胞体にCaイオンを取り込むポンプの異常(筋小胞体Caポンプの機能低下)が起こります。また、細胞内にCaイオンの漏れが生じ、細胞内のCaイオンが減少し収縮力の低下をきたします。

 

この状態が続くと不整脈の原因にもなります。治療のひとつとして、β-遮断薬の投与によって不整脈が抑制され、異常が改善する報告もあるようです。

心筋虚血

運動などによる生理的な心肥大では、血管新生をともない毛細血管の密度に変化が起こらないか、やや増加する程度と考えられます。しかし、病的な心肥大では、血管増殖因子が阻害され、血管新生が十分になされず毛細血管の密度が減少し虚血状態になります。

 

慢性炎症
ウイルス性心筋炎や、虚血性心疾患、拡張型心筋症などの心不全において、炎症が関係すると考えられています。ウイルス性心筋炎では、ウイルスに対する免疫反応、すなわち活性化したT細胞からの炎症性のサイトカイン(IL‐1,インターフェロン)の分泌で炎症が起こります。

 

一方、心筋梗塞などでは、患者の血液中にミオシンやβ-受容体への自己抗体が現れ、心筋炎を起こすと考えられています。これは心筋障害後に起こる二次的な免疫反応による炎症であり、心不全につながる可能性があります。ミトコンドリア依存のDNAの破片が飛び出し、それに対する自己抗体ができ炎症が起こっているとの報告もあります。

 

続いて、心臓の動きと身体の働き|心臓と心不全

 

 

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