ポリファーマシーと転倒とFRIDs

ポリファーマシー(内服5剤以上の薬を服用している状態)において、転倒の危険性が1.3倍に増加する報告があります。また、中枢神経へ作用する薬を服用している場合には、転倒の危険性が1.54倍に増加すると考えられています。

 

中枢神経へ作用する薬は、安定剤や不眠症の治療薬だけではありません。消炎鎮痛剤(NSAIDs)も中枢神経へ作用する(頭痛やめまいの副作用など)ので、転倒につながる危険性があります。

 

また、明確な関係性があるわけではないのですが、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)も意識レベルに関与するといわれているため、注意が必要です。眠気の副作用の強い第一世代の抗ヒスタミン薬には、特に注意するべきでしょう。

 

降圧薬を使用開始して14日以内は、転倒の危険性が1.94倍に増加します。薬を飲みはじめる時、薬が変更になった時は、特に注意が必要です。このように転倒の危険性を上昇させる薬剤FRIDs(Fall Risk Increasing Drugs )といいます。

 

代表的なFRIDs

薬の種類 転倒の危険性
抗うつ薬 1.68倍に増加
抗精神病薬 1.59倍に増加
ベンゾジアゼピン系薬剤 1.57倍に増加
睡眠薬・鎮静薬 1.47倍に増加
降圧薬 1.24倍に増加
消炎鎮痛剤(NSAIDs) 1.21倍に増加

 

なぜ転倒が危険なのか
日本において、高齢者の5人に1人が、1年間に1回以上の転倒を経験しています。そのうち、5~10%の方は、骨折などの重大な外傷が起こるとされています。転倒には、次のような原因(リスク因子)があります。

高齢(80歳以上) 女性
やせ うつ
認知機能障害 糖尿病
視力障害 筋力低下
関節炎 疼痛(痛み)
バランス障害 歩行障害
失禁 ADL障害
めまい 起立性低血圧
心疾患 頭蓋内疾患
過去の転倒歴 薬剤

 

転倒のリスクを減少させる対策
中枢神経に作用する薬剤を減量できれば、転倒する可能性を66%減らすことができる報告があります。もちろん、中枢神経系に作用する薬は、急に減量すると離脱症状などの危険があるため、医師の判断に従う必要があります。

 

また、起立性低血圧を起こさないために、必要以上に血圧を下げないようにする必要があります。また、もともと起立性低血圧がある患者には、α遮断薬(降圧薬)を使用しないほうが無難であると考えられます。

関連ページと参考図書



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