治療薬とNaチャネルの開閉

不整脈に対する薬(抗不整脈薬)の選択はとても難解です。誤った選択は、突然死をまねくことすらあるのです。(詳細はこちら

 

抗不整脈薬は、飲みはじめには効果があっても、使っているうちに無効になる場合が多くあります。不整脈に対する治療の領域は、まだまだ未開発領域であるといえます。

 

不整脈とその治療薬を考えるにあたって、まず「イオンチャネルがどのように開いたり閉じたりするのか」を知る必要があります。

Naチャネルの開閉

【Naチャネルは、どのようにして開いたり閉じたりするの?】

 

心臓の動きには電解質イオンの流入、流出が重要です。その中でも、Naイオンの動きは、心臓の電気刺激のはじまりに関係しており非常に大切です。心室の細胞において、電位差が約-65mVになると、Naチャネルが開きNaイオンが細胞内に流入します(脱分極)。下図の0相が示すように、電位の立ち上がりに関係するNaイオンの流入は一瞬です。

 


出典:心電図の読み方(心室細胞の活動電位)

 

その後(2相:プラトー相)も、Naイオンは少なからず細胞内に入ることができると考えられます。つまり、Naチャネルは最初の一瞬大きく開き、その後もしばらく隙間が開いているであろうと考えられます。(この考えに関する詳しい文献はありません)

 

このように、NaチャネルはNaイオンを一瞬だけ入らせて閉じてしまいます(0相)。そして、その後も少なからず入る状態(2相:プラトー相)にしておくのです。どのようにNaチャネルが開閉するのか、その仕組みが重要です。

 

まず、チャネルとは特定の電解質が通るタンパク質でつくられた孔(通り道)であり、Naイオンだけが通ることができます。一つの細胞に無数のNaチャネルがあります。

 

このNaチャネルには、二つのゲート(活性化ゲート不活性化ゲート)があります。そして、このゲートの開閉の組み合わせによって三つの状態があります。

 

①活性化状態(0):勢いよくNaイオンが(細胞内に)入り込む
②不活性化状態(Ⅰ):Naイオンは少しだけ入る
③静止状態(R):Naイオンは全く入れない

 


チャネルの様子とゲートの動き(上) 電位変化曲線(下) 出典:不整脈プロフェショナル

 

*適合する電位差になると活性化ゲートは開き不活性化ゲートは閉じます(活性化状態)。
*不活性化状態になると活性化ゲートは開いていますが不活性化ゲートは閉じたままです。
*そのあと静止状態になると活性化ゲートは閉じていますが不活性化ゲートは開きます。

 

Naイオンが通過するには、活性化のゲートが開いて不活性化のゲートが邪魔しない必要があります。どちらかのゲートが閉まっている状態において、Naイオンが通過することはできません。活性化状態は、ほんの一瞬だけですが、二つのゲートが同時に開く状態です。

 

細胞の活性化ゲートは電位の変化に敏感で、約-65mV(Naチャネルの開く電位差)になると開きます。一方、不活性化ゲートは、脱分極に反応して閉じます。しかし、不活性化ゲートは鈍感で動きが鈍く、一瞬だけ同時に開いた状態があると考えられます。

 

 

続いて、不整脈の治療・Naチャネル抑制薬

 

 

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