Naチャネル抑制薬
不整脈を抑える薬(抗不整脈薬)には、多くの種類があります。そして、この使い分けは困難であり一筋縄ではいきません。この中で、Naチャネル抑制薬は、どのようにチャネルにくっつき、どのようにNaイオンの流入を邪魔をするのか。仕組みを理解することが大切です。
主な抗不整脈薬一覧(Vaughan Williams)
分類 |
代表的な薬の名称(一般名称) |
作用 |
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Ⅰ群 |
Ⅰa |
アミサリン(プロカインアミド) |
Naチャネル抑制 |
Ⅰb |
アスペノン(アプリンジン) |
Naチャネル抑制 |
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Ⅰc |
サンリズム(ピルシカイニド) |
Naチャネル抑制 | |
Ⅱ群 |
アセタノール(アセブトロール) |
β1受容体遮断 |
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Ⅲ群 |
アンカロン(アミオダロン) |
Kチャネル抑制 | |
Ⅳ群 |
ベプリコール(ベプリジル) |
Caチャネル抑制 |
まず、チャネル抑制薬とは、イオンが細胞内外を出入りするチャネルに作用する薬です。そして、チャネルにくっつき、その機能を邪魔します。
薬がくっつく部分は、チャネルの中の「ある特定の部位(受容体に似た部位)」です。その部位に薬がくっつくことで、イオンチャネルを構成しているタンパク質に変化が起こり、イオンの通過を邪魔します。薬がチャネルを塞ぐわけではありません。
Naチャネル抑制薬は、「Naイオンの細胞内への流入」を抑制して細胞の興奮を弱めます。結果、次の細胞に伝える電気刺激が弱まったり、伝導速度が遅くなったりします。この作用によって、不整脈を止められる場合があります。
そして、薬がチャネルにくっついた後、すぐに(静止期になると)その部位から離れるといわれます。しかし、実際はそれほど単純ではありません。
細胞が以下の3種類の状態のとき、Naチャネル抑制薬がチャネルにくっつきます。
①チャネルが活性化状態
②チャネルが不活性化状態(主に2相)
③その(①と②)両方の状態
主にどの状態で薬がくっつくのか(離れるか)は、薬の種類によって異なります。それぞれの薬は、その分子の大きさや電荷が異なるため、Naチャネルに対する親和性が異なります。
薬によって、チャネルの作用がきっちりと抑制され、一定時間で一気に効果が消えるものではありません。つまり、薬が作用する時間は、一定ではなく不規則であるということです。